複雑・ファジー小説
- Re: ◆鬼退師付き海賊銃乱戦風◆【表紙絵アップ】 ( No.9 )
- 日時: 2011/09/07 13:34
- 名前: 王翔 ◆OcuOW7W2IM (ID: T8uIPv/C)
第三論
窓の白いカーテンを開けると、果てしなく広がるガラス面のように美しい大海原と、白と青の鮮やかなグラデーションを映す空が広がっていた。
窓の向こうに展開するのは、夜明けの色彩。
リオは、しばらくその景色を堪能した後、テーブル前の椅子に腰を降ろした。
机の下から、きれいに手入れが施されたアサルトライフルを引っ張り出し、じっと見据える。
それを見つめるリオの瞳は、懐かしそうな色を浮かべていた。
このアサルトライフルは、姉からのプレゼントだった。
妹にそんな物騒な物を送るなんてとんでもない、と考える人もいるかも知れないが姉は、リオの海賊になりたいという夢を応援して身を守れるようにとこれを送ってくれた。
だから、大事な物だった。
◆
「うー……」
船員室のソファで、寝転がって目をこすっている星乱の姿があった。
「ゴロゴロするな、さっさと起きろ」
「しかし……」
「しかしじゃない。働け」
「むー……猫は寝るのが仕事なんだ」
「ふざけるな、爆破してやろうか?」
「むー」
星乱は、ようやく起き上がり、ごしごしと目をこする。
しばらく部屋のなかを見回し、ぼーっとした表情でリオを見据えながら。
「腹が減った」
「舐めてるのか?」
「鮭の塩焼きが食べたい……」
「……一つ、聞くが──以前に会ったことないか?」
「いや、ないが」
リオは、不思議そうに首を捻った。
過去に鮭の塩焼きを好きな人物がいた気がする、と思ったがべつに鮭の塩焼きが好きなのは珍しいことではないので、疑問を振り払った。
「もういい、働かせたところで足手まといになりそうだからな」
不機嫌そうに呟き、向かい側のソファに腰掛け、本をパラパラめくっていたアッシュに視線を移す。
「アッシュ。何か作ってやれ」
「はいはい」
「うー」
「うーうー言うな!」
「むー」
諦めてため息をつくと、リオは踵を返した。
「じゃあ、私は見回りに行ってくるからな」
「いってらっしゃい」
◆
甲板に出ると、黒い薄雲が空をすっぽりと覆い、薄暗い世界が展開していた。
リオは、気を引き締め、背中に携えていたアサルトライフルを手に取り、大海原を見据えた。
「出るか……」
一言呟いた瞬間、空気をびりびりと揺らし、風が頬を強くかすめるほどの凄まじい咆哮が聞こえ、海面を割り裂くように黒い獅子のような喰い人が姿を現し、甲板に舞い降りる。
リオは、アサルトライフルを構えつつ、手をかざして《人物情報》を呼び出し《魔法》をタッチする。
目の前に《魔法情報》と呼ばれる、使うことが可能な魔法のリストが表示される。
《炎乱射》をタッチすると、ウィンドウが消え去り、アサルトライフルの周囲を赤い何語かは分からない文字列が囲む。
引き金を勢い良く引くと、煌めく紅蓮の炎が銃弾のように放たれ、龍の如くうねる炎が喰い人を包み込む。
喰い人は、炎を浴び奇声を上げながらもこちらに向かって突進してくる。
後退しつつ、アサルトライフルの引き金を引き続け、ひっきりなしに炎を放ち続けた。
やがて、炎を大量に浴びた喰い人はガラスが割れるような破壊音を響かせながら、粒子となって消え去った。
リオは、アサルトライフルを下げ、一息。
「お兄さん……いや、お姉さん? 腕が立つんですねぇ」
振り向くと、頭に二本の黒い角を生やした少女──鬼だった。