複雑・ファジー小説

Re: 大三島の風から—妖と海賊の物語— ( No.25 )
日時: 2011/09/08 21:04
名前: 火矢 八重 (ID: AHkUrUpg)

 すると、ブサ兎はこう答えた。

「—————反魂の術だ」

「反魂・・・?」

 通康が聞くと、ブサ兎は詳しく説明した。

「これは、死んだ者を蘇らせ、その者の意思を操る事が出来る。
必要なのはそのものの魂と、寄り代。寄り代は死んだ魂の血縁の者が一番適している。————これでもう判っただろう。魂は華巌で、寄り代は———お前だ」

 ブサ兎の言葉を聞いて、通康は背筋が凍った。

「ま、まさか・・・そんなことで、母上は殺されたのかッ!?」

「お前にとっては『そんなこと』でも、事実は事実だ、通康。人は愚かで現金なものだ、なあ?」

 今度こそ、通康は全身が凍った。
 —————そんな、理不尽な理由で、父と母は殺された・・・?
 法師は、本来なら結婚してはいけない立場。浄土真宗など結婚して良い宗もあるが、だが仏に仕える法師が、自分の嫉妬心の為に人を殺めるなんて・・・。

 数分、沈黙が流れた。ブサ兎は黙っている。通康が喋るのを待っている。
 通康が沈黙を破った。

「・・・はあ。真実を知るとろくでもないな」

 通康が言うと、ブサ兎は言った。

「フン。知りすぎて自滅することだってあるわい」

「————でも、長年の謎が判ってすっきりした」

 なあ、ブサ兎、と通康が言うと、ブサ兎は怒った。

「ブサ兎ゆーな!」

「じゃあせめて名前教えてくれよ」

 通康が言うと、ブサ兎はもっと怒った。

「お前如きの下等生物に、私の高貴な名前を渡すことなんか出来るか!」

「じゃあ、もののけさんで」

「ものッ・・・・」
 
ガーンとショック音が鳴る。もののけさん、あっとう間に撃沈。

「なあ、頼む。俺の傍に居てくれないか?」

「は?」

「今は母上の事は聞けない。でも、何時か聞きたいんだ。だから、もののけさんが居てくれたらなって・・・」

「あほ言え!何で私がお前なんかの為に居る義理があるんだッ!」
 
 もののけさんは更に怒る。だが、何処か嬉しそうな顔もしていた。いわいる照れ隠しと言うのだが、もののけさんも通康も気づいていない。
 通康はニコニコしながら続ける。

「—————だって、ずっと一緒に居てくれたんだろう?今更どうってことないだろ。
 なあ、頼むよもののけさん。俺が死んだあとはすぐに俺の肉体を喰って良いからさ」

 妖は妖力の高い人間の肉が好きだろう?

 そう言うと、もののけさんは呆然としていた。

「・・・本当に、死後お前の肉を喰って良いんだな?」

 もののけさんが一度釘をさす。

「俺の傍に居て、俺を守って、俺に母上の事を聞かせて、俺がちゃんと命運が尽きたらね」

「何か注文が多いな。だが、お前は妖力は極上。美味いしな」

「俺、やっぱ美味いんだ」

 もののけさんはフッと笑った。

「良かろう、その契約————」

 本当は、喰う気なんてさらさらないんだがな。
 

 その言葉を聞くと、フッと通康に睡魔が襲った———————。



 夢を見た。
 もののけさんと、華巌が鬼ごっこをして遊んでいる夢を。
 隠れ鬼をしている夢を。
 一人と一匹は、楽しそうに過ごしていた——————。

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うわあああああああああん(泣き)!
雰囲気があ、雰囲気があ!夏目に似ちゃったよぉ!


・・・仕様が無い。パクったわけでもないし、ギリセーフと言うことで。