複雑・ファジー小説

Re: 大三島の風から—妖と海賊の物語— 『ご協力お願いします!』 ( No.42 )
日時: 2011/09/10 18:22
名前: 火矢 八重 (ID: 6DNfJ1VU)

 汐音と鶴姫は更に会話を盛り上げる。汐音は通康の足元に居るもののけさんを鶴姫に紹介した。
「で、この兎ちゃんはもののけさん。凄い妖なんだって」
 紹介すると、鶴姫は思いっきりもののけさんに抱きついた。

「グホッ!」
 もののけさんはその後悲鳴を上げる。が、可愛いものに目がない女子二人は気付かない。

「うわあああああああん!可愛いぃぃぃぃぃ!フワフワしてるぅ!」
「でしょう!?」

 キャーキャーと盛り上がる女子二人。その光景を見た通康と通宣は驚いた。
 二人とも思っただろう。

——————女子って、皆あんな趣味なのかなあ。

と。


「・・・で、気になっているんだけど、その方は誰?」
 一通り鶴姫がもののけさんに抱きついた後、汐音が後ろに居た少年を指した。
 通康はともかく、汐音や通宣も知らないということは、新人のようだ。

「ああ、この人は越智安成。私の用心棒よ。ちょっとワケアリだから、あまり詮索しないでね」
 鶴姫は安成には聞こえないように、汐音の耳元で言った。

 汐音はじっと少年の顔を見る。少年は、何故かずっと硬直したままだ。
 ————誰だろうこの人。何だか懐かしい・・・。
「ちょっと安成、何硬直しているんですか?」
 鶴姫が言うと、やっと安成は我にかえった。ついでに汐音も我にかえる。
「あ、いや。すいません」
「そッ。さあ、いきましょう。早く行かないと妙が五月蠅いですよ」
 鶴姫の言葉に、汐音と通宣は顔を真っ青にした。良く見ると縦線が視える。

—————一体、何があったんだ・・・?
あまりにもの豹変ぶり。二人の様子を見て、通康は冷や汗をかいた。
 そして、その原因を、通康は目の当たりにする。


 桜が散る。淡く染まる花弁はまるで、雪のように積もる。
 ————ああ、何て美しい景色だろう。
 汐音は思った。普通ならそう思うだろう。美しい花を愛でる。それが花見なのだから。
だが、今の状態はある意味、現実逃避だった。

「おっせぇんだよ、てめえらあああ!」
「「ぎゃああああああああああ!」」

 満開の桜の下で、河野兄妹はこってりしっかりある少女にしごかれていた。
 少女は竹刀を振り回し、河野兄妹を制裁している。
 通康と安成は固まっており、もののけさんと茂賀は酒を飲みながら面白そうに見ており、鶴姫と金龍は呆れて見ている。

 ちなみに金龍は今は人に化けている。川のように長く多い金髪をかんざしで綺麗に結い、淡い青の色の羽衣と丈の長いチャイナ服を着た姿はまさに天女だ。