複雑・ファジー小説
- Re: 大三島の風から—妖と海賊の物語— 『歌詩考えてください!』 ( No.45 )
- 日時: 2011/09/10 21:01
- 名前: 火矢 八重 (ID: 6DNfJ1VU)
「ちょっと妙。貴方怒りすぎですよ。もう止めなさい」
鶴姫が何とか竹刀を振り回している少女——————宍戸妙を止めようとした。
「はあ!?てめーは黙ってろ!」
売り言葉に買い言葉・・・ではないが、その場のノリで口調を荒くする妙。
—————その時、時間は止まった!
鶴姫はニッコリ笑った。
「・・・今の言葉、聞き捨てにならないわね★」
「え、えっと、その・・・」
だが目は笑っていない。星も黒い。あまりにもの剣幕に、妙もたじたじ。縦線も視える。
鶴姫の後ろに、真っ黒い不穏な空気が流れている。
汐音と通宣は一緒に固まり、安成は前から見ていて判っていたのか、それでも肩が震えている。あとの皆は硬直だ。あのもののけさんですらも、酒を抱えて震えている。
「くすくすくすくすくすくすくす・・・・・・」
—————始まった!
鶴姫は怒った時、黒魔術を行う。その序章がこの気味の悪い笑い声なのだ。
桜が舞う。妖しき雰囲気を漂うそれは、不穏な空気を纏っている鶴姫をより一層不気味さを引き立てた。
「さあ、くらいなさい★」
「ぐっはあああああ!」
妙、鶴姫の黒魔術にて撃沈。
一部始終を見ていた通康たちは、数十分は動けなかったとのこと。
「いやー、今日花見に来てよかったなー!」
「本当にねえ!」
数十分後にやっと動けるようになった通康たちは、今さっきのことを忘れることにして花見を始めた。黒歴史は忘れる方がいい。
布を木の下に引いて、弁当を置く。物凄く豪華だが、実は汐音と通宣の母霧妃が作ったものだ。
「奥方様にこんなことさせて・・・」
「いいんじゃない?お母様、凄く嬉しそうな顔して厨房を占領していたよ?」
真っ青になる通康の言葉を、ニコニコしながら汐音が遮る。
————全く、河野家は常識外れと言うか・・・。
「おい、酒。酒をくれえ!」
「私も酒をくださいなのですー☆」
既に酔っ払いのブサ兎と擬似人間馬。
「貴方達は少しお酒を制限してください!」
「ああ、良いって良いって!金龍も、お酒飲んでも良いんだよ?私たちは飲めないけれど」
金龍が酔っ払いを叱り、汐音がたしなめる。
「いいえ!私があんなにはしたなくなったりしたら、示しが付きません!」
と、金龍は言いながらお酒を飲んで酔っ払ったりしている。
鮮やかに散る桜に、美味しい食卓。それを、一人で食べるんじゃなく、大勢で食べる。
————楽しいな。
通康は、前では考えられない光景に、楽しんでいた。
- Re: 大三島の風から—妖と海賊の物語— 『歌詩募集中!』 ( No.46 )
- 日時: 2011/09/11 17:45
- 名前: 火矢 八重 (ID: 6DNfJ1VU)
運動会終わったー!本当にきつかった・・・(泣き)
では、本文。
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◆
酔っ払い一匹と二人を屋敷に運び、通康たちは鶴姫の屋敷に泊まることになった。
「明後日にココを出るなら、明日もあの桜見に行きましょう?」
鶴姫が言うと、皆賛同した。
もう眠る時間になったので、妙と汐音は私の部屋に、通康殿と通宣は安成の部屋に眠ることにした。
だが、眠る時間になっても、眠れないのがお約束というものである。通康たちはこっそり喋ったり笑ったりして騒いでいた(こっそりだが)。
騒いでいる中、酔いが覚めたもののけさんが、通康の布団にもぐりこんだ。
「もう覚めたのか?もののけさん」
「酔いなどとっくに覚めているわ。あのくらいの量はな。金龍とかいう龍はともかく、茂賀も覚めとるぞ」
まあ、あれだけ飲めば中々覚めないだろう。もののけさん以上に、金龍は飲んでいたのだから。
「じゃあ、今まで何処行っていたんだ?」
安成が聞くと、もののけさんは鶴姫の所に行っていたと言った。
「女子を怖がらせようとして、行ったんだ」
「例えば?」
「桜の木の下には、遺体が埋まっているって話をな」
————桜が綺麗なのは、桜の木の下に遺体が埋められているからである。そして夜に、鬼となって地から這い上がり、人を喰うと・・・。
通康を見ると、黒いオーラが流れている。と思いきや、通康は思いっきりもののけさんの頭を一発殴った。
「ぎゃふん!」
「おい、ブサ兎、何て話しやがるんだッ!」
「何!?高貴で気高い私になんて口を利くんだ!」
「汐音たちが変なトラウマ持ったら明日花見に行けなくなるだろッ!」
ギャーギャー喧嘩する通康ともののけさんを、通宣が止めた。
「おい、落ちつけ通康。それで?」
安成が続きを促すと、もののけさんは続けた。
「その話をした途端・・・・」
女子たちは嬉しそうに、
『きゃー!じゃあ、血とかドバーて出たのかな!?』
『うわ、それイイ!こう喉を掻き毟るようなッ・・・!』
『鬼が誘惑して食べ過ぎて死んだって言うのもいいね!』
「・・・と」
言い終わったもののけさんの体は、びっしょりと冷や汗でぬれていた。あ、縦線も視える。
「やっぱりな」
「そんな所だと思った」
だが、通宣と安成は普通だった。と言うか、安成が普通の顔で通宣は笑顔だ。通宣の笑顔は何処かのほほんとしている。
だが、通康は固まった。いや、それが普通なんだけれど。それが女の子と思っている通宣や安成たちがおかしいだけで。
冷や汗と、顔を真っ青にしている。もののけさん同様縦線も視える。どうやら、モロに想像してしまったようだ。
その日、モロに想像してしまった通康は中々寝付けなかったという。