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複雑・ファジー小説
- Re: ■菌糸の教室■ 【オリキャラ・出演募集中】 ( No.14 )
- 日時: 2011/09/29 12:29
- 名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: /AwggsBu)
……楓君は、覚えていないのだろうか。
少し、感傷的になりながら、右隣りの席に座っているクラスメートの横顔をぼんやりと眺めた。全神経を黒板に集中しているようで、ガン見しても本人は全く気付いていない。まぁ気付いたらちょっとマズイんだけど。
やっぱ、覚えてないんだろうね。
無理もないか。そんなに世界、都合よくできていないことぐらい私だって分かってる。
柚木さんがあんなに楓君に執着する理由。たぶん、ここにいる人間で、その理由を知っているのは私だけだと思う。柚木さん自身もどうやら忘れているようだし。これじゃ、私だけ除け者みたいじゃないか。
あーあ。つまらない。
すると桜の花びらが、一枚、目の前の男の頭の上にちょうどよく乗っかった。この男に、こんな可愛らしい薄桃色は似合わないと心の底から思った。
教えてやろうかどうか迷ったが、ささやかな復讐の意味も込めて、私は見て見ぬふりをすることにした。いい気味だ。
■ 楓秀也くん へ 菌糸の教室 より ■
誰にも忘れられた真実は、もう真実ではありません。
誰にも忘れられた記憶は、きっと虚像と呼ばれるのでしょう。
だって私は、あなたの記憶でしか生きることができなかったから。
あなたの真実とでしか、存在できなかったから。
だから、恋をしてしまいました。
だから、憎んでしまいました。
菌の恋は薄桃色。狂った鮮やかな薄桃色。桜の花びらなんかより、数倍綺麗な薄桃色。
また、いつか。思い出してくれるのなら。
桃色の菌糸を、せいいっぱい、伸ばしましょう。
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