複雑・ファジー小説

Re: ■菌糸の教室■  【オリキャラ・出演募集中】 ( No.15 )
日時: 2011/10/15 16:35
名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: 4pf2GfZs)

■第二話 影の子■


「久美……今日も、学校に行くの?」


すると私の姉は、私を完全に無視して、忙しそうに台所へと続く扉を乱暴に開けた。バーンと大きな音がして、私を震え上がらせた。

この乱暴な音が、 煩い、これ以上話しかけるな、という意思表示だということを私は知っている。
いつもだったらここで引き下がるのだが、そうはいかない。もう、最後の日から随分経つのだ。今日も、久美が学校へ行くことになったら、私は引き籠り同然じゃないか。

「ねぇ、ねぇ!久美!聞いてよ!」

しかし久美は相手さえしてくれそうにもない。さっさとお弁当をの中身を詰めて、制服に着替えると、私には何も話しかけないで玄関を颯爽と出て行ってしまった。もちろん、ガチャリという音がして、鍵をかけていった。

「はぁ……」今日で762日目。久美は相変わらず学校に行き続けた。新しい高校はどんなところなのだろう。中学校とは一体どう違うのだろう。

新しい学校のことを考えると、胸がワクワクする。さんざん想像を膨らませて、沢山ワクワクする。
私は久美と同じ制服を着て、久美と同じ学校に行くんだ。部活にもきっと入って、新しい友達もきっと大勢できる。今まで苦手だった男の子とも、きっとうまくやっていけるんだ。

楽しかった。楽しそうにしている久美を、自分に置き換えて考えるのが楽しい。

けれど、このことを久美に話すと、久美は嫌そうな顔をする。そしていつも通り、大きな音を立てて、私に「これ以上喋るな」と言う。どうしてこれ以上喋っちゃいけないのか良く分からないが、もっと怖いことをされるのは嫌なので、私はおとなしくするしかない。

どうして、どうして久美はずっと学校に行っているのだろう。
私の番だって、もう何回も言っているのに。