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複雑・ファジー小説
- Re: ■菌糸の教室■ 【オリキャラ・出演募集中】 ( No.16 )
- 日時: 2011/10/09 23:21
- 名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: gb3QXpQ1)
久美が学校に行ってしまってから、しばらくが経った。私の憂鬱な気持ちとは関係なく、狭い窓枠からは抜けるような青空が見える。ああ、もう春になってしまったのだな、としみじみと思った。
私は柚木くみ。久美の双子の妹だ。
親戚たちは私に漢字の名前を与えてくれなかった。平仮名でくみ、即ち仮名の私は久美の影でしかない。私のソレとは対照的に久美の名は、漢字、言い換えれば真字で真名である。
真と仮。
それが、久美と私の関係だった。
いつも通りに鏡の前に立ち、じっくりと自分自身を観察する。腰まで伸びた髪は久美とそっくりな栗色で、背丈も、目付きも、全てが久美とそっくりそのままだ。
けれど、二年以上外に出ていない私の肌は、健康的な小麦色の肌をした久美とは違って病的に色白だ。髪の毛も長すぎる。久美みたいな元気いっぱいそうなセミロングぐらいが、いい。
鏡の向こう側に映った窓枠に、相変わらず綺麗な青空が見えた。
なんだか、悲しい気持ちになった。
どうして、私は外に出てはいけないのだろう?
どうして、私だけこんな思いをしなければならないのだろう?
どうして、“クミ”としての時間は久美だけのものなの?
どうして、どうして。
もう出ないと思っていた涙が、静かに頬を伝う。無意識に、喉の奥から嗚咽が漏れる。
自分の泣き顔すら久美とそっくりで、鏡をまともに見ることができない。嫌だ、嫌、嫌。
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして。
同じ言葉を繰り返し続けて、言葉の意味さえ曖昧になってくる。いつものことなのに、今日は何故だか感情が抑えられない。自分でも信じられないぐらいにボタボタと、涙が次から次へと視界を濡らす。どうして、どうして。
—————————————————————— どうして?
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