複雑・ファジー小説
- Re: ■菌糸の教室■ ( No.26 )
- 日時: 2011/10/21 19:31
- 名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: 4pf2GfZs)
≫葵サソ wwwww自分も分けて欲しいですw
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僕こと、峰由詩は下宿生だった。
隣接県特例によりわざわざ越県して今通う学校、坂右高校に入学した。自由な校風と有名国立大への進学率の高さからずっと入りたかった学校だ。過去、しばらく会っていない兄も同じ学校に通っていたという。
新しい友達もたくさんできた。授業も独特で、興味深いものばかりだ。
本当に、この学校に入学できて良かったと思っている。
ただ、そういうプラスの面とは別に坂右高校は退学者が多いという悪評が前々から立っていた。こんなにいい学校なのになぜ退学してしまうのだろうと、とても不思議だった。
だが、入学して理由はすぐに分かった。公立高校であるが故に地方中学からの進学者が多い。つまり中学時代は学習面で常に学年一位、そんな言わばプチ・エリートたちの集まりなのだ。
同じレベルの人間が集えば当然嫌でも順位がつく。もちろん一位が居れば最下位もいる。そんな中で殊にプライドの高い元エリートたちは一人、また一人と零落していくのだった。
最近知ったのだが、驚くことに兄もそんな退学者の一人だったという。今の僕と同じように下宿生として通っていたらしい。
僕が物心ついた頃から兄と父親は仲が悪かった。兄が坂右高校に進学したのも、できるだけ早く父親の住むあの家から抜け出したかったせいかもしれない。そして兄が家を出た後、僕の家族の間では兄の話をするのはタブーとなった。だから、兄が退学していたこともようやく最近になって知ったのだ。
それから、ちょうど一週間後。
僕はある日、街で兄の知り合いだという何歳か年上の人たちに突然話しかけられた。僕のパッと見た感じが兄にそっくりだったという。
兄について興味があったし、知りたいと思った。そう言うと、その人たちはいいよ、話してあげる、だけどおうちにお邪魔していい? と言った。見た目がチャラいし、少し嫌だったけど兄の知り合いだと言うのなら悪い人たちじゃないだろうと思った。そのまま、部屋に案内した。
……それから。
彼らは何度も下校中の僕を見つけては毎回家に入れろと迫ってきた。どんなに用心して帰っても、大通りを選んで帰っても、彼らには天性の才能があるのかそれとも僕の運が悪いのか、必ず僕は彼らに丸め込められた。
初めの方は、2、3人がやって来て部屋から物を盗んでいくだけだった。けれどだんだんと彼らの仲間は数を増やしているようで、ついには風俗っぽい女の人も連れ込まれるようになった。7人で来たときは本当に怖かった。
4月と言えどもこの地の風はまだ寒い。夜の寒さの避難所として僕の部屋は利用されているようだった。
一時的な欲求が満たされると、更に欲が湧くのが人の性だ。ついにリーダー格の男が僕に暴力を振るうようになった。今じゃ女以外は全員僕に暴力を振るうようになっている。
それでも飽き足らない。弱い者いじめはよほど楽しいようだ。
僕は彼らが部屋に来る、夜の記憶がちょくちょく飛ぶようになっていた。どうやら変な薬を打たれているらしい。朝目覚めると、腕に痣と注射痕が残っていることが多々あった。
薬が効いている間のことはよく覚えていない。うっすらと、覚えているのは彼らの怖い顔とおかしそうに笑う低い声。薬で狂った僕を殴ったり蹴ったり弄んで、愉しんでいるようだった。
そして今。
よく覚えていないけれど、昨晩は特にひどかった気がする。頭がすごく痛い。
それでも、この頃はそんなに辛くない。酷いことに対して耐性がついたというか何というか。
辛くならないようにするコツは、別けるのだ。虐められている時の惨めな自分と学校での楽しい自分を。当然、同じ自分だけれど少し意識を変えてみる。一人称を変えて、気分も口調もきっかりと変える。たったそれだけのことだけで、気持ちが随分と楽になる。
だって楽しい学校生活に影は落としたくなかったから。
楓や、他のクラスメートとの仲に変な私情は持ち込みたくなかったから。
……僕は決して落ちぶれたりはしない。兄のようになったりは、絶対にしない。