複雑・ファジー小説

Re:      ■菌糸の教室■ ( No.3 )
日時: 2014/03/02 21:32
名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: KE0ZVzN7)



■第一話 菌の恋■


 「かーえーでーくんっ!」

 新学期。
 三年間過ごし慣れた中学を卒業し、俺は新しい学校、つまりはこの高校に入学した。全国的にも名の知れたこの学校は、かなり倍率が高かったが、それでも頑張ってなんとか滑り込みで合格することができた。

 クラスメイトは皆いい人ばかりだ。ガリ勉で、冷たい人間しか居ないものかと思っていたが、そんなことは全然ない。むしろ、フレンドリーで明るい人達が多い。唯一、予想通りであったことは、眼鏡率が異常に高いことぐらいであろうか。

 しかし、一人居るのだ。俺的に苦手な奴が。



   柚木 久美



 別に性格が悪いわけではない。けれど、若干しつこいのだ。
 毎朝毎朝、教室に入ると、「かーえーでーくんっ!」と大声で挨拶をしてくる。それだけならいいのだが、その後に質問攻めを始める。 どこに住んでるの?部活は何やる予定?キャー陸上部!すっごおーい!じゃあ運動得意なんだねー♪すごいなーいや、お世辞じゃなくて、マジで!
 ……とにかく、彼女が口を開いたらきりがない。

 一言で彼女を表すのなら、面倒くさい奴。

 ちなみに俺は異性にベタつかれるのがあまり好きではない。それを同姓に冷やかされるのはもっと嫌だ。 ……あまり、彼氏彼女、っていう関係を面白いとも感じたことがない。好きな人一人より友達十人の方が欲しい気もするし。


 そして今日も、駅を降りたところでこの厄介なクラスメートに捕まってしまった。さすがに朝ぐらいは静かにしておいて欲しい。

 「かーえーでーくんっ!」
 明るい栗色の髪を振りながら、向こうの方から彼女がバタバタと走ってくる。どうしてこの人は朝からこんなに元気があるのだろう??


 嗚呼、
 頼むから静かに学校へ通いたい……