複雑・ファジー小説

Re: ■菌糸の教室■ ( No.59 )
日時: 2014/03/02 21:29
名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: KE0ZVzN7)


 それから私に課せられた仕事は、とても簡単なものだったけれど、私にしかできないことだった。


 —— 久美さんは私が始末しといたから。


 悠はある日の朝、いつも通りに外から帰ってきて、そんなことを私に告げたのだった。まるで今日の天気は雨よ、というくらいに、軽い言い方だった。



 「んで、今日から久美さんのかわりに風架があの学校に通う。通いたかったんだろ?」



 それは、とても突然すぎて、わたしには理解しがたかった。
 そしてその言葉と共に手渡されたのは、綺麗な包み紙を纏ったたくさんのチョコレート。


 「それでさ、学校の友達にこのチョコレートたくさん撒き散らしてね。いいか、できるだけヤワそうな奴を狙うんだよ。青少年特有の鬱な気分を抱え込んだ様な奴ね。手首に傷のある奴なんかは、特に狙い目だ」


 ほらよ、と悠が軽く笑って布の塊を私に投げる。
 わわわ、と驚きながらそれをキャッチすると、びっくりしたことにそれは久美の学校の制服だった。ブレザーをひっくり返して、ポケットの裏地を見てみると、久美の名前が刺繍してある。間違いなくこれは久美のものだろう。



 「それ着てさ、明日から高校行きな。なぁに、私がついてる。大丈夫だって」

 そう悠は力強く言うと、ポンポン、と優しく私の頭を叩いた。