複雑・ファジー小説

Re: 魔界の魔王ども ( No.8 )
日時: 2011/09/12 14:05
名前: 御神西鬼 (ID: C.IWX95H)

「ここからはラクダから降りて行きましょう 流石にラクダで家の中をうろついては失礼ですから」

なんとか頭痛を堪えた二人はラクダから降りると二階を探索し始めた
沢山の部屋があったがどの部屋も掃除されいなくて立ち込める埃のにおいに二人は咽そうだった

「一体、どこにいるのでしょう」

「手掛りがないからね どうしようもないよ」

「ドアに名前でも書いてくれててるとうれしいんですが…」

「そうはいかないでしょう」

アハハと笑い飛ばしたが二人はあるドアの前で立ち止まった

「これ…」

「なんと、自己主張の激しい…」

ドアには大きくアスタロトと書かれてあった
それはもう本当に大きく

「入ってみる?」

「入らなきゃいけないでしょう」

二人はドアノブを捻った
少し音を立てながら扉が開いた
中は他の部屋と同じぐらいに汚かったが、物はあまりなく天蓋つきのベットが一つ置かれていた
そしてそのベットからは規則正しい寝息が聞こえる
二人はそろりそろりと別途に近づいた
恐る恐るベットを覗き込むとそこには一人の悪魔が寝ていた

「この人がアスタロト?」

「多分そうでしょうね」

二人は一度顔を見合わせると意を決してアスタロトを揺すった

「アスタロトさま、起きてください!」

しかし、全く起きようとしない

「仕方ありません 最終手段に移ります」

「最終手段に走るの早くない?」

「はい、アリトン 水をぶっ掛けてください」

「僕がやるの!?」

言ってなかったがアリトンは水を司る悪魔なので水を操ることができる

「仕方ないか…」

アリトンはできるだけ手加減をしようとした
だが、こういう時に限って悲劇は起こるもの
アリトンは部屋の埃でくしゃみをしてしまったのだ
力の制御が上手くできなくなり、結果アスタロトの上に大量の水が降り注いだ

「……」

「……」

二人はしばらく硬直した
そしてアスタロトがムクリと起き上がった

「…あんたら誰?」

未だ眠そうな目でアスタロトは二人をみた
全身びしょ濡れなのは気にしていないらしい
もしくは気付いていないらしい

「僕たちはサタンさまの命令で貴方に会いにきた パイモンとアリトンと言います」

「サタン様が僕に何の用?」

面倒臭そうに言うとアスタロトはあくびをした

「近頃、大天使ミカエルが不穏な動きをしているらしくそれを千里眼で探ってほしいと」

「僕だって忙しいんだ そんな暇ない」

(いや、今まで寝てただろ)

アリトンは頑張って心の声を封じた

「まぁでもサタン様の命令に背くわけにいかないし、ぱっと見ましょうか」

そういうとアスタロトは目を閉じた
意識を集中させているらしい
急に張り詰めた空気にアリトンとパイモンは固まった
さっきまでのギャグモードは何処へである

「見えた…」

ぱっと目を開けて小さく呟いた

「今日の晩御飯はシチューにしようなかな だって」

「何の情報ですか!」

「シチューにはやっぱり悪魔の肉が必要だなとも言ってたぞ」

「え?」

「じゃあつまりミカエルは晩御飯の献立を決めてただけ?」

「見る限りはそうだな」

二人は骨折り損のくたびれ儲けという言葉を身をもって実感した


ちなみに
屋敷のトラップはアスタロトが安眠妨害されないために仕掛けたものであと100ぐらいあります