複雑・ファジー小説
- 2ページ ( No.22 )
- 日時: 2011/09/18 01:06
- 名前: コーダ (ID: UccMOYif)
イーエの町、市場(しじょう)。
教会から300mくらい離れた場所にある。
ここで売られている物は西洋の国はもちろん、東洋の町で売られている物もある。
骨董品(こっとうひん)、嗜好品(しこうひん)、食品、種類を問わず。
一般的な人も居れば、富裕層(ふゆうそう)も若干この市場を利用している。
余談だが、この世界の流通の仕方は船である。
そんな中、1人のシスターも歩いていた——————
首につけている金の十字架のアクセサリーを揺らしながら、辺りを見回して何かを探す。
「あっ、見つけた」
少女はにっこりと微笑み、目当てのお店の方へ足を進める。
そのお店に売られていた物——————くさや、酒盗(しゅとう)、カラスミなどの東洋にある珍味だった。
お酒のおつまみを買いに来る人しかよらないお店に、1人の少女。しかもシスター。
非常に違和感があった。
「すみません、これください」
少女はやけに嬉しそうな表情を浮かべて、右手に持っている珍味を買う。
すると、店員が、
「今日も買ってくれてありがとな、それにしても本当に好きだよな」
どうやらシスターは、このお店の常連客だった。
「はい。これは……癖になります」
この言葉に、将来は酒を飲んで珍味を食べているシスターを思い浮かべる店員。
「そうかい、でもほどほどにしておけよ?」
そんな違和感たっぷりあるシスターにしないように、店員は一応遠回しに警告する。
「は、はい……」
少女もこの言葉に素直に頷くが、目は完全に泳いでいた。
珍味店を後にしたシスター、早速買った珍味を口に入れて食べていた。
「美味しい……」
懸命に口を動かして食べる。噛めば噛むほど味が出て、とても塩気がある。
少女の手に持っていたのは、ビーフジャーキーみたいなものだが、それはやけに赤身を帯びている。
それは、魚の赤身を乾燥させて物を連想させる。
そう、シスターが食べていたのは鮭とばだったのだ。
「東洋の人は、いつもこれを食べているのかな……?」
少女は羨ましそうに遠くの方を見つめ、またどこかへ足を進める。
>>29