複雑・ファジー小説

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日時: 2011/09/18 01:06
名前: コーダ (ID: UccMOYif)

 イーエの町、市場(しじょう)。
 教会から300mくらい離れた場所にある。
 ここで売られている物は西洋の国はもちろん、東洋の町で売られている物もある。
 骨董品(こっとうひん)、嗜好品(しこうひん)、食品、種類を問わず。
 一般的な人も居れば、富裕層(ふゆうそう)も若干この市場を利用している。
 余談だが、この世界の流通の仕方は船である。

 そんな中、1人のシスターも歩いていた——————
 首につけている金の十字架のアクセサリーを揺らしながら、辺りを見回して何かを探す。

「あっ、見つけた」

 少女はにっこりと微笑み、目当てのお店の方へ足を進める。
 そのお店に売られていた物——————くさや、酒盗(しゅとう)、カラスミなどの東洋にある珍味だった。
 お酒のおつまみを買いに来る人しかよらないお店に、1人の少女。しかもシスター。
 非常に違和感があった。

「すみません、これください」

 少女はやけに嬉しそうな表情を浮かべて、右手に持っている珍味を買う。
 すると、店員が、

「今日も買ってくれてありがとな、それにしても本当に好きだよな」

 どうやらシスターは、このお店の常連客だった。

「はい。これは……癖になります」

 この言葉に、将来は酒を飲んで珍味を食べているシスターを思い浮かべる店員。

「そうかい、でもほどほどにしておけよ?」

 そんな違和感たっぷりあるシスターにしないように、店員は一応遠回しに警告する。

「は、はい……」

 少女もこの言葉に素直に頷くが、目は完全に泳いでいた。
 珍味店を後にしたシスター、早速買った珍味を口に入れて食べていた。

「美味しい……」

 懸命に口を動かして食べる。噛めば噛むほど味が出て、とても塩気がある。
 少女の手に持っていたのは、ビーフジャーキーみたいなものだが、それはやけに赤身を帯びている。
 それは、魚の赤身を乾燥させて物を連想させる。
 そう、シスターが食べていたのは鮭とばだったのだ。

「東洋の人は、いつもこれを食べているのかな……?」

 少女は羨ましそうに遠くの方を見つめ、またどこかへ足を進める。

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