複雑・ファジー小説

3ページ ( No.29 )
日時: 2011/09/19 23:34
名前: コーダ (ID: xe6C3PN0)

「そこの人——!どいてくれぇ——!」
「えっ……?きゃっ!」

 シスターの少女が路地裏の狭い道を歩いている時に、突然背後から叫び声が聞こえてきた。
 それを聞いた少女は、後ろを振り向いた瞬間1人の男がぶつかってくる。
 あまりの勢いに、お互い1mくらい後ろに跳ばされる。

「痛た……って、おい大丈夫か?」

 男は尻もちの状態からさっと立ち上がり、少女の無事を確認する。

「あっ、はい……大丈夫です」

 シスターはゆっくり立ち上がり、服についた汚れを両手で落とす。

「良かった。っと、それどころじゃねぇ……」

 男はやけに後ろを気にして、言葉を呟く。
 茶色の髪の毛は肩まで長く、前髪はやけに目にかかっていた。
 右目にはモノクルをつけており、その瞳は黄色と赤が混ざったような色。
 白いYシャツを着て、下は動きにくいスーツを着用している。
 そして、背中には黒いマントをつけており路地裏を通る風で、かなりなびいていた。
 マントをなくせば、ただの夏服のスーツを着た男性だ。
 少女は頭に疑問符を浮かべながら尋ねる。

「あ、あの?どうかしたのですか?」
「いや、ちょっと追われててねぇ。俺ってもてるからさ」

 口元を上げて、陽気に追われていると告白する男性。
 確かに、背中にマントをつけた怪しい人がこの町に歩いて居れば追われる。
 少女は、にっこり微笑み、

「なら、私についてきてください。この路地裏は熟知しています」

 とても優しく、温かい正にシスターの微笑み。
 男性は少しぎょっとする。

「へぇ〜……で?どこに行くの?」
「ここです」

 シスターはすぐ近くの家を指す。
 そこには裏口と思われる扉が1つあった。

「勝手に入って良いのかぁ?」
「大丈夫です」

 やけに自信満々なシスター。とりあえず、今はこの少女に任せるしかないと判断した男性は黙って家の裏口から入る。

 ——————「ちっ……逃がしたか」

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