複雑・ファジー小説
- 3ページ ( No.35 )
- 日時: 2011/09/20 23:50
- 名前: コーダ (ID: ZMpE7sfz)
バルコニーの窓から入ってきたのは、自分とほぼ同じ姿をしたドラキュラだ。
腰までかかるくらい長い血のように赤い髪の毛は、目にかかっている。
目が悪いのか、四角いメガネをかけていてその瞳は血のように真っ赤だ。
頭には、血のように赤いリボンが2つ結ばれておりとても可愛げがあった。
赤いドレスのような物を着用して、なぜか背中には赤いマントと悪魔のように黒い翼が生えている。
黒い尻尾が動くたびに、赤いマントも若干動く。よく見ると、マントには謎のエンブレムが描かれていた。
左手には、とても厚い本を持っており、どこか知的な雰囲気を伺わせる。
そして、1番印象に残るのは口を開けるたびに鋭い牙が見えることだった。
「隣、よろしいでしょうか?お姉さま」
「あぁ、かまわん」
本を持ったドラキュラはメガネを取り、それを懐にしまって刀を持ったドラキュラの隣に座る。
「どうだ?良い策は思いついたか?」
「いいえ、これといったものはないですわ」
この言葉に、ワイングラスを揺らし大きく唸る刀を持ったドラキュラ。
そんな姿を見た、本を持ったドラキュラは持っている本を開く。
「人間が遠い存在になるなんて、思いもしませんでしたわ」
「だが、早めに策を考えなかった私たちも悪い。どっちもどっちさ」
ワイングラスに入った液体を飲み干し、真っ赤な月を見つめる刀を持ったドラキュラ。
「……明日、森へ行ってみませんか?獣の血もそろそろ在庫が少なくなってきましたわよ?」
「そうか……分かった。明日朝一で森へ行こう。獣の血は不味くて嫌な気分になるが、腐っても血だ。私たちの生命を少しくらい繋げてくれる」
「うふふっ、獣の血を採取してさらになまった身体をほぐす……一石二鳥ですわね」
本を持ったドラキュラは、とても可愛げのある微笑みを浮かべて立ち上がる。
「なんだ?もう行くのか?」
「ええ、わたくしはまだ調べたいことがありますことよ。シーマお姉さまは、明日に備えてくだされば良いですわ」
「すまないな。私の頭が悪くてそういうのはキーマに任せて」
「ふふっ、お姉さまの為ならわたくし苦ではありませんわよ」
長い髪を優雅に揺らし、キーマと名乗るドラキュラはバルコニーを後にする。
残されたドラキュラ。シーマはしばらく真っ赤な月を見つめていた——————
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