複雑・ファジー小説

3ページ ( No.39 )
日時: 2011/09/21 21:17
名前: コーダ (ID: xr1in99g)

「あらぁ〜?」

 森林の中を飛びまわるサキュバス。
 黒い尻尾をうねうね動かし、何かの気配を感じる。

「う・し・ろ・か・し・らぁ?」

 黒いマント翻(ひるがえ)して、後ろを振り向くサキュバス。

 ——————遠い所に生えている、深い草むらが小さく揺れた。

「誰か居るのかしらぁ?」

 色っぽい声を出しながら、揺れた草むらへ向かうサキュバス。
 恐怖という気持ちは全くなく、今のサキュバスを動かしていたのは好奇心だけだった。

「も・し・か・し・て……?」

 謎の期待を寄せるサキュバス。
 もしかすると、あの草むらの先には男がいるかもしれない。
 だが、この深い森林。獣が揺らしたという可能性の方が高い。

 それでも、サキュバスは期待を寄せて草むらの先を見つめる——————

「あっ……ど、どうも……」

 なんと、草むらの先にはぎこちない笑顔で言葉を飛ばす男が居た。
 黒い髪の毛は耳にかかららないくらい短く、前髪も目にかかっていなかった。
 四角いメガネをかけていて、その瞳は藍色に輝いていた。
 科学者を連想させる真っ白な作業服を着て、なぜかネクタイもちゃんとしていた。
 右手には大量の文字が書かれたメモ帳がある。

「うふふっ……みぃ〜つけたぁ〜」

 サキュバスは色っぽい瞳で、科学者みたいな男を見つめる。
 この不思議な眼光に、思わず心が揺れ動く男。

「うわっ……なんですかこの気持ち!?」
「ほらぁ、肩の力を抜いてぇ……」

 サキュバスは、どんどん男との距離を縮める。
 マントで隠されているとはいえ、隙間から見える豊満な胸。肉つきの良い太股(ふともも)。
 大抵の男なら、これで1発KOする正にボン・キュ・ボンな身体。

「こ、これがサキュバス……?」
「そうよぉ……私は、サキュバス……ねぇ?楽しいこと……しない?」

 黒い尻尾をうねうね動かし、もっと色っぽい口調で男へ言葉を囁く。

 そして、サキュバスの右手が男の右頬に触れる——————

「てんめぇ——!俺を置いて行くなぁ——!」

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