複雑・ファジー小説
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- 日時: 2011/09/22 21:05
- 名前: コーダ (ID: NH1RGN1H)
「あら?また裏口から入ってきて……たまには、表から入ってきなさいよ。シスタ」
「す、すみません……今日は、少し事情があって……」
裏口の扉を入った瞬間、1人の女性にそう言葉を飛ばされる。
茶色の髪の毛は肩までつくくらい長く、頭には赤いカチューシャをつけていた。
前髪は目にかかっておらず、その瞳はとても綺麗な緑色だった。
お屋敷に仕えるメイドではなく、ただ接客をするメイドの格好が印象的な彼女。
当然、スカートはその分短かった。
話の流れ的に、シスターの少女。シスタを知っているようだった。
「事情?なにかあったの?」
メイドの女性は頭に疑問符を浮かべながら、シスタに尋ねる。
「えっと、この人」
「あっ、どうも」
背中にマントをつけた、いかにも怪しい男性が陽気にメイドの女性へ言葉を飛ばす。
「だめでしょ。こんな怪しい人をつれてきちゃ」
一方、メイドの女性はこんな怪しい男を連れてきたシスタの額を人差し指でつんと押す。
「確かに怪しいですけど、誰かに追われていたから……」
「そりゃ、こんな怪しい人が町の中でうろついていたら、追われるに決まっているじゃない」
今時、背中にマントをつけて歩いている者は居ない。
メイドの女性の言う事は、紛れもない事実だ。
「酷い言われようだなぁ。まっ、良いや……助かったし」
マントの男は、右手で頭をかきながら言葉を呟く。
そして、続けざまに、
「そういえば、ここって何?なんか普通の家じゃないらしいけど?」
「ここは、私がよく行く喫茶店です」
なんと、ここはシスタがよく行く喫茶店だったのだ。
確かに、常連客が裏口から入っても(この表現は少々おかしいが)怪しまれることはない。
「そして、この喫茶店で働いているのが私。サビュ=アーテンよ」
どこからか持ってきた銀色のおぼんを片手に持ちながら、アーテンは自分の名前を言う。
「私は、この町のシスター。アルテ=シスタです」
「おっと、この流れ的に次は俺の名前か?」
マントをつけた男は、口元上げて2人へ言葉を飛ばす。
「そうよ。私とシスタは言ったんだからあなたは言う義務はある!」
「勝手に言ったのはそっちだけどねぇ。まぁ、良いや。俺はトルスト=スフェーンだ」
スフェーンはそう言って、店の中は入っていく。
「あら?どうかしたの?」
「ここって喫茶店だろ?なら、紅茶くらいいだたかないとねぇ」
本当に追われているのか甚だ疑問に思う言葉。
シスタとアーテンは小さな溜息を残して、店の中へ入っていく。
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