複雑・ファジー小説
- 4ページ ( No.48 )
- 日時: 2011/09/22 21:06
- 名前: コーダ (ID: NH1RGN1H)
「あら?こんな時間に誰かと思ったら、ブラッツァでしたのね。ええ、こちらはなんとかやっていますことよ?」
高さ3mくらいの大きな本棚がズラリと並び、その中に多種多様な本が置いている場所——————図書館。
本棚の影によってかなり室内は薄暗かったが、天井の赤い光で照らすシャンデリアで足元はちゃんと見える。
そんな場所で、1人のドラキュラがぶつぶつと言葉を呟いていた。
右手に電話の受話器を持ち、左手に厚い本を持つメガネをかけた女性ドラキュラ。キーマだ。
「ただ、血が不足していますの……ええ……あら?そちらにはまだ在庫があるのですこと?」
キーマは左手に持っている本を器用にめくり、電話相手と話す。
「よろしかったら、ブラッドラキャッスルまで送っていただけますこと?お題は、ちゃ〜んとお支払いしますわ」
口元を上げて、嬉しそうに言葉を言う。
「わたくしとシーマお姉さまは、ブラド・ブラッツァ製の血が大好きですわ。人の血に限りなく近い味……」
ブラド・ブラッツァ。
ドラキュラ世界で有名な、ワインを制作する場所。
そのワインは限りなく人に近い味ということを売りにしているが、値段が少々お高いので飲める機会は少ない。
原料は普通のワインと同じだが、その中に人の血を微量入れている。
とても簡単そうに思うが、微量がどれくらい微量なのか分からず、少しでも入れる量がずれると、味がとんでもなく変わるので自作することは困難。
当然、入れる量はブラド・ブラッツァの作業員しか知らない。
「お届け日ですか?明日はわたくしとシーマお姉さまが居ないので明後日で良いですわ」
左手に持っている本を閉じるキーマ。
「それでは、良い夢を」
受話器を置き、キーマはかけているメガネを外し懐にしまう。
「明日向かう森の座標はこの本に書いてありましたし、準備は万全ですわね」
どうやら、彼女が持っていた本は明日向かう森について書かれていた物だった。
主な動植物、場所、座標、歴史——————
「手に入る情報を全て頭に叩きこんでおいて損はないはずですわ」
キーマは持っている本を電話の傍へ置き、図書館の奥へ足を進める。
すると、1つの扉が目に映る。
なんの躊躇(ためら)いを持たず、彼女はその扉を開ける。
——————そこは小さな部屋だった。
可愛らしいタンス、可愛らしいベッド、大量に積み重なった本が乗っている木の机。
説明するまでもなく、キーマの部屋だった。
「やはり、ここは落ち着きますわね」
キーマはそう呟き、来ているドレスを脱ぎ始める。
本を読んでいる割には、けっこうすらっとした身体。
白くてすべすべしていそうな肌には、とても派手で色っぽい下着をつけていた。
張りのある大きな胸、肉つきのいい太股(ふともも)。
全国の男性がみたら、8割くらい鼻から赤い液体が吹き出るダイナマイトボディ。
タンスを開けて、キーマは可愛らしいパジャマを取り出し、それを着る。
「ふふっ……寝るときは、1番楽な格好ですわよね」
可愛らしく微笑み、キーマはベッドの中へ入りゆっくり瞳を閉じる。
その姿は、ドラキュラということを忘れさせるほどだった——————
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