複雑・ファジー小説
- 4ページ ( No.54 )
- 日時: 2011/09/22 21:07
- 名前: コーダ (ID: NH1RGN1H)
「えぇ〜?なになにぃ?」
慌てふためくサキュバス。
なんと、森の奥からもう1人の男が現れたのだ。
黒い髪の毛は肩にかかるくらい短く、前髪はかなり目にかかっており、瞳は黒色に輝いていた。
科学者を連想させる真っ白な作業服を着て、ネクタイもちゃんとしていたが、科学者という雰囲気は全く漂わせていなかった。
右手には乱暴な文字で書かれたメモ帳がある。
「お前と言う奴は!俺を放っておいて何楽しそうなことをやっているんだぁ——!」
科学者に見えない男は、草むらの上で情けなく座る男の肩を思いっきり叩く。
「い、痛いですよ!それに、こちらは襲われていたんですよ?ウルス」
ウルスと言われた科学者に見えない男は、この言葉を払いのけてさらに肩を叩く。
「サキュバスに襲われるなんて光栄だろうがぁ——!あぁ、あの翼……尻尾……胸……太股(ふともも)……くぅ、たまらん!」
1人で勝手に興奮するウルス。
草むらに座っていた男は、浅い溜息をして立ち上がる。
「本当。ウルスは変態ですよね」
「はぁ!?男は皆変態だ!つまり、お前も変態!だろ?ロズ?」
ロズと言われた科学者は、苦笑する。
「ウルス程じゃないですよ」
「いや、お前はムッツリ」
「ちょっと!それはどういうことですか!?」
「言葉のまんまだ!」
ロズとウルスはどんどん盛り上がる。
すると、傍に居たサキュバスが、
「ねぇ〜!?私はわ・す・れ・て・な・い?」
色っぽい声を出しながら、2人に怒鳴る。
黒い尻尾をうねうねさせて、その気持ちを露骨に表現させていた。
「あっ、忘れていました」
「うぅ〜……」
ロズの言葉に、サキュバスは小さく唸る。
意外とその言動は可愛らしく、人間ではないのに思わず胸を躍らせてしまうくらいだ。
「こらぁ——!サキュバスを悲しませるなぁ——!」
ウルスはロズに怒鳴り、今度は頭を思いっきり叩く。
「痛っ……なんで、こうなるんですか?」
頭を叩かれたことに、納得がいかないロズ。だが、理由を聞いてもまた叩かれる予感がしたのであえて黙る。
「ねぇ〜?あなたたちは、こんな森で何をしていたのぉ〜?」
サキュバスは、人差し指を口に当てながら色っぽく2人に質問する。
すると、ウルスは腕組をして、
「俺たちは、この森の調査をしていたのさ!こいつは、植物科学者のプラン=ロズ。んで、俺は生物科学者のアニマ=ウルスだ!」
どうやら、この2人は本当に科学者だったようである。
「へぇ〜……科学者ねぇ」
サキュバスは、口元上げて胡散臭く微笑む。
「こ、怖い微笑みですね……」
「サキュバスの微笑みは、どんな男も堕とすっていうからな!当然、俺も……」
ウルスはにやけながら、サキュバスにじりじりと接近する。
「あらぁ〜?あなたぁ、私とや・り・た・い・のぉ?」
「是非!っと、言いたいところだが……まずは、君の研究からしないとな!」
科学者として正しい事を言うが、その言葉はやけにいやらしく聞こえたのは言うまでもない。
「あ〜んなことや、こ〜んなことを調べられるのぉ〜?」
「そうそう!言葉を喋れるサキュバスは貴重だからな!根掘り葉掘り聞かないとな」
ウルスは突如、目を鋭くして言葉を飛ばす。
この豹変ぶりに、ロズは少し背筋を伸ばし怯える。
「とりあえず、立ち話は大変ですから他の場所で話しませんか?」
ロズの意見に、ウルスとサキュバスは大きく頷く。
森の中を歩く男2人と1匹のサキュバス。それはとても奇妙な光景だった——————
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