複雑・ファジー小説
- 6ページ ( No.92 )
- 日時: 2011/10/17 20:51
- 名前: コーダ ◆ZLWwICzw7g (ID: zdDXpDJz)
「さぁ、お姉さまの準備もすんだことですし。早速森へ行きますわよ」
「森で戦闘するのに、わざわざ身だしなみをするなんてな……キーマの頭がよく分からん」
ブラッドラキャッスルのエントランスで、2人の女性ドラキュラ姉妹。シーマとキーマが会話をしていた。
妹のキーマは分厚い本を右手に持ち、姉のシーマは腰に立派な刀を構える。
——————かつて、知と技で人間を殺すドラキュラが居た。
知のドラキュラはあらゆる属性魔法を使い、技のドラキュラは東洋の刀を振りまわす。
その姿は恐ろしくも、美しかった。
そう、そのドラキュラこそシーマとキーマである。
だが、今の2人にそんな雰囲気は皆無である——————
「もし、人間に会ったらどういたしますの?ドラキュラが寝ぐせをつけて歩いて居ると噂をされたら、行き地獄ですことよ?」
「いや、それはキーマだけだ。そもそも、ドラキュラの存在はもう人間の頭にはない……」
シーマの言葉に、キーマはかけているメガネを右手で上げる。
「まぁ、そうですわね……今の人間がわたくしたちを見ても、ただのコスプレ好きとかおかしな人で片づけられますわ」
しばらく無言になる。自分たちの存在意義を改めて考える2人。
「はぁ……こんなことばかり考えても仕方ない。早いところ森へ行くぞ」
「分かりましたわ。では、森へ行くためにドラキュラゲートを開きますわ」
キーマは右手に持っている本を開き、小さな声で呪文を詠唱する。
すると、2人の目の前には赤い魔法陣が現れた。
ドラキュラゲート——————ドラキュラが使える特殊なゲートで、その場所の座標が分かれば一瞬でそこまで行けるという便利な物。
当然、そのゲートは人間に見える物ではないが、実際に存在はするので極稀に人間がゲートに入ってしまう事がある。
その時は、ゲートを開けたドラキュラたちにゆっくり血を吸われる。
「さぁ、行きますわよお姉さま」
キーマがゲートへ足を踏み入れると、シーマも無言で足を踏み入れる——————
○
「うん。この湖も基準に達しているね」
生い茂る森の中。底が見えるくらい透き通った湖に1人の少年が居た。
赤いフードつきのローブを着用して、髪の毛の状態は分からなかったが瞳は赤く輝いているのは分かった。
傍から見ると、かなり目立つ服装で獣たちにとってはかなりの標的でもある。
そんなことも知らずに、少年はずっと湖の温度やペーハーを調べていた。
「この森はとても湖の数があるからね……全て調査するのは大変だなぁ……」
少年は次の湖へ向かうため、この場を後にする——————
○
「さぁ、緑あふれる森へ到着いたしましたわ」
「ふむ……空気が美味いな」
同時刻。ゲートで森へ向かったブラッドラ姉妹が居た。
太陽の光線が直で浴びる時間帯。なぜ活動できるのか——————
「お姉さま。久しぶりの戦闘ですけど油断は禁物ですわよ?」
「分かっている」
「後、危なくなったらドラキュラゲートへ逃げるのです事よ?」
「分かっている……全く、キーマはいちいち細かいな……」
「うふふっ……それは、わたくしにとって褒め言葉ですわ」
キーマはメガネを懐に入れ、笑顔になる。その表情はとても綺麗で可愛らしかった。
こうして、2人は森の中を散策するのであった——————