複雑・ファジー小説
- Re: 【もっと】 「 カイラク 」 【楽になりたい】 ( No.51 )
- 日時: 2011/11/09 20:26
- 名前: 玖龍 ◆7iyjK8Ih4Y (ID: AidydSdZ)
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眠い。
目を覚ましたのはベッドの上で、目の前に広がるのは唯のガラクタの山だった。ベッドだけ、私のもの。ベッドを囲むように歯車やボルト、螺子、釘、エンジン部分と錆付いてもう何にも使えないようなガラクタが転がっていたり、積まれていたりする。
服は自分のパジャマで、足は裸足だった。
まさかの夢オチである。あの自殺もあの道も全部、覚めた途端に跡形も無く消え去ってしまった。
私は生きている、のか?
心臓に手を当てる。
——————————音が、聞こえない。
ああ、あのチャラ男のせいか。
心臓の音が聞こえない、つまり私は死んでいる。もしくは、此処も夢の中。他にも此処は異次元だとか、時空の狭間だとかそういう考え方も出来るが、あまりに現実的ではないので違うと仮定しておこう。夢の中という考えも、夢を見ていて夢の中にいるなんて気が付いたことは無いので、多分違う。
つまり私は死んだ。そういうことだ。
死ねて良かった、そう思うべきなのだろうか。確かに私は死に対して恐怖は無かった。寧ろ生を拒んでいた。こんな腐った何の面白みも無い灰色の世の中で生きていても何の意味も無い。だったら死んだほうが良いのではないのか。生きていても死んでいても同じなら、死んでいたほうが楽だ。
だが、此処に何がある。此処に存在する明らかな死以外に、何がある。このガラクタの山の中に、私の望んだ物はあったのか?
死に快楽は無い。私の望んだ物は此処には無い。命すら何処にも無い。
私が望んだ快楽は、生の中にあったのか?
今更、何を思う。
小さく溜息を吐いた。どういう原理か、このだだっぴろくて壁の無いガラクタ部屋のどこかにぶつかって、音がぐわんと歪む。
壁があるのだろうか?
「あー」
声を出してみると、こんどはさっきよりも大きく反響して自分の耳に届いた。私の元に戻ってきた音は、歪みが大きすぎて自分の声じゃないみたいに聞こえる。
もう一度辺りを見回してみる。
特に変わったものは無く、さび付いたガラクタが一面に広がっていて、遠くは暗くなっていてよく見えない。ただ、ガラクタの山とこの空間は何処までも続いてるようだ。
小さく溜息を吐いて、自分のベットに腰掛けた。
何処にもいけないし何かすることもない。やることが無い以上の憂鬱は無い。
また、眠ろうか…………。
そうだ、そうしよう。此処で眠っては目覚め、また眠っては目覚める。それを永遠に繰り返していればいい。
夢の中に、快楽を求めよう。
私はベージュの掛け布団をめくって、ベッドの中に滑り込んだ。
めくった掛け布団とシーツの間に、暖かく輝く何かが見えた、気がした。