複雑・ファジー小説
- Re: 「 カイラク 」 ( No.79 )
- 日時: 2012/05/21 15:51
- 名前: 玖龍 ◆7iyjK8Ih4Y (ID: CMvpO4dN)
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彼女は、カラフルだ。彼女は、単色だ。単色だけど、少し視線をずらしてもう一度彼女を見ると、また違った色に見える。カラフルだ。
カラフルだけど、綺麗じゃない。
「別に……」
高い鳥居の色彩と彼女の色が混ざって目が痛くなる。ここは、色が多すぎて疲れる。
彼女は私の回答を聞くと、歯まで真っ赤な口をにやりと上に吊り上げて目を大きく見開いた。黒い瞳孔が赤く、小さくなり、私を見下ろす。役目を果たしきらなかった心臓がどくんと一つ、脈を打った。
「なんだ、ノリ悪いな? 自分に翼をつけて上ってきたのよ、ほら、こうやって、ね」
彼女は紫色の左手を大きく開くと、ピアノを弾くように躍らせた。翼? そんなものが作れるのか?
そんなことを考えていたら、急に私の体が前に倒れた。手を地面に付こうとして前に出しても、地面には触れられずにすかっと外れて私はくるりと一回転。ここは、空中だ。何とか体を地面と垂直に維持できるようになったと思ったら、ワンピースの裾がふわりと捲れてしまう。手で押さえようと下を向くと、さっきまで私が立っていた床が遥か遠くに見えた。
落ちる。と、いう感覚が一瞬。確かに私の体は落ちたが、それほどの距離でもない、鳥居の真上から鳥居の上へと着地しただけだった。私はすとん、と、鳥居の上に座ったことになる。
着地してからバランスをくずして今度こそ落ちると思ったら、カラフル子の腕が伸びてきて私の腕をつかんで落としてくれなかった。
「ね、簡単でしょ?」
私は鳥居の上に上ってきた。ちゃんと登れていたが……。本当に翼を生やしたのか? 魔法使いは生きていたのか、と、カラフル子の緑色の顔をまじまじと見つめた。
カラフル子は目を少し細めて私を見つめ返し、口を開いた。
「さて、夢中ちゃんはどうやってこのゲロ高い鳥居を塗ったのでしょう?」
……え?
確かに、言われてみれば。鳥居の七分の一くらいの身長しかない私はどうやってこの大きな高い鳥居に色を塗ったのだろう? 色を塗っているときは夢中で気が付かなかった。
……夢中?
「ヒント、夢中ちゃんは夢中で生きながら死んでる。夢中ちゃんには、この意味不明ごっちゃぐっちゃ世界で何が出来る?」
私にはこの世界で何ができるか?
私は、此処に来てから嫌いな場所を好きな空間に変えたり、スプレー缶を出して、色を付けたりした。変える、出す。
“いいかい、想像と、創造だ。”
チャラ男の声が繰り返す。
「ぶーっ、タイムオーバー大正解!」
顔をあげて右隣を見ると、彼女は既に其処には居なかった。チャラ男が言った。想像力が私の圧倒的な実力。想像と、創造。
私は壮大なスケールのことを考えているに違いない。レベル上げも何もしないでいきなり最終ボスに挑むのは馬鹿過ぎる。小さな問題から考えていこうか。
取敢えずここからはどうやって下りればいい?