複雑・ファジー小説

Re: 【違う】仲なんて 知らないよ【知れないんだ】 ( No.20 )
日時: 2011/10/12 19:23
名前: シグマσ ◆IG222GjZjs (ID: OgnYhGeD)

  「ここ 何か嫌」


 その願いを彼女は聞かない。
 自分の思いに忠実だったから——

  深呼吸をして、
 小さな一軒屋のドアをあける。
 軋むような重い音がした後、木がこすれる様な音もした。


「一応、ここに住めそうね」
「……気のせいだったのかな」

 彼女の問いに答えない青年は、代わりに何かを呟いた。

「入る前はヘンな感じがしたのに……」
「気のせいじゃない?」
 


「でも確かに違うんだよ! 」

 いきなり声が大きくなった。心臓飛び出るわそんなの

「ま、まぁ一日過ごしてみようよ、ね?」

 彼女は青年をなだめるように優しく問いかけた。

「じゃあそうする。変なコトがあったら僕はすぐここをでるから」
「……わかったわ」

 彼女は、(変なコトが起こりませんように!)
  と、心の中で唱えつづけた。
 


Re: 【違う】仲なんて 知らないよ【知れないんだ】 ( No.21 )
日時: 2011/10/12 20:00
名前: シグマσ ◆IG222GjZjs (ID: OgnYhGeD)

 そう思っていると、突然頬が冷たくなった。
 方向転換し、窓のほうをみると綺麗な満月が浮かんでいた

「きれい……。」
 彼女は窓辺に手をあて、月に見惚れていた。
 青年も、いつのまにか窓に身を乗り出していた。


「もう夜なんだね。日が落ちるの早いなぁ…」
「うん。そろそろ寝ようか。」
 青年は頷き、その場に横たわった。



 *    *     *

 
 木の軋む音が耳に響く。
 どうして目が覚めたのかなぁ……?
 彼女は疑問を持っていた。まぁそんなこといいんだ。
 ふと横を見ると
 青年はもう寝ているようだった。


 月は休むことなく光っていた。
 光ってた……
 彼女はなんだか悲しくなってしまった。










Re: 【違う】仲なんて 知らないよ【知れないんだ】 ( No.22 )
日時: 2011/10/13 18:48
名前: シグマσ ◆IG222GjZjs (ID: OgnYhGeD)


 その月の光は、闇の中で静かに瞬いていた。
 遠慮するように。
「もっと光っても良いのに
「闇じゃないんだから、目立って良いし」
「光だから、役に立てるじゃない。」
 

彼女は、独り言を呟き、そして頬杖をついた……

 
 
 


——暖かい……
  だけど、体温とは違う他の何か——
 「涙」だった。


 どうして泣いているの
 悲しいことなんか何も無いのに。
 泣かないように、寝ている青年を見てみたんだ。


 視界は、更に歪み、霞み、なにがなんだかわからなくなった。
 この人のために泣いてるの——?


 そんな事思ってはいけない。
 消すためなんだ。仲良くなるためじゃないのよ?

 闇と人は仲良くなれないなんて……


  最初から、知って……いや、言ってたじゃないのよ、私……
  声を立てず、その場で泣いていた。

 それは確かだった。