複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を(略)参照500なので少しずつ誤字修正 ( No.102 )
- 日時: 2012/05/24 20:11
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: wDvOBbcg)
17・いつまでなんて、わからないじゃん。
立花は、性格が穏やかだ。
温厚で、優しい。だからこそ、俺はアシュリーに彼女の存在を教えた。彼女なら、アシュリーの呼びかけに答えてくれると思った。アシュリーは心が優しいから、彼女もアシュリーを気に入ると思ったのだ。
「成功、だ」
アシュリーのそんな声を聞きながら、俺は目を開いた。肌寒いから、きっと立花が来たんだ。でも、すぐに帰ってしまったようで、もう彼女の気配はしない。いや、彼女が直接来ているわけではないが、もう一度彼女を呼び出すには再び詠唱を唱えなくてはいけないのだ。
そこが面倒だが、魔術を立て続けに使う魔術もある。それは難しくて、体力も必要だから、俺は好まない。それより、ばん、とでかいのを使った方が楽だ。
それに、疲れても、銀たちがフォローしてくれる。その環境があって初めて、俺は安心して魔術を使えるのだ。
でも、時々不安になる。もし、俺の魔術の制御がうまくいかなくて、銀たちを傷つけてしまったら、どうしよう。俺には守るものが増えた。
それが少し、つらい。
俺はアシュリーのために寝たふりをしようと、目をつぶる。
早く、銀たちに会いたい。
+ + + +
「あきれる」
「よく言われるよ」
私は地面に視線を落とす。
ため息をつこうとして、やめた。
「私たちって、分かる? ほぼ他人でしょ? なのにどうして私が、あんたのこと心配しなきゃいけないの?」
なんだか恥ずかしくて、早口で言葉を吐く。銀は少し唸って、やがて訳が分からない、とでも言いたげに私の顔を覗き込んできた。反射的に、顔を上に向ける。銀はまだ顔を覗き込んでくる。
「そんなことない。他人だからって、心配しないわけじゃないよ。アシュリーだって、俺たちのこと、助けてくれた。赤の他人なのに」
出た。アシュリー。私はアシュリーって人のことなんか知らない。
なのに、そんなの気にしないで、銀はすぐにその名を口にする。アシュリーは女の人だ。きっと優しい人。銀は彼女のことを話すとき、目を細める。まるで、まぶしいものを見る時みたいに。懐かしそうに。
「知らないよ、そんなの」
「そうだ、アシュリーたちに紹介するな、お前のこと。約束するよ」
銀は嬉しそうに、小指を私の前に出してきた。
何勝手に決めつけているのだろう。私はこの世界に長居するつもりなんてない。いつあっちに戻るかわからない。それなのに。コイツは。バカが。話していて疲れる。
「ヤダ。私、アンタらに興味ないし」
銀は突然、私の顔をつかんで、無理矢理に顔を向い合わせた。
私は驚いたが、銀の手を振り払うことができなかった。力が強い。
怖い。銀が怖い。そんなこと、なかったのに。
でも、銀は微笑んだ。
「大丈夫だよ」
〜つづく〜
十七話目です。
誤字修正はまだ少し残っています。