複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を(略)参照500なので少しずつ誤字修正 ( No.103 )
日時: 2012/07/19 22:22
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)

18・記憶の行き場を知らないだろ。


「大丈夫とか、アンタが決めることじゃない」

私がひねくれたように言えば、銀は少しさみしそうに眉をひそめる。ちょっときつく言い過ぎただろうか。
でも、事実だ。私のことを、銀に決められたくない。
でも、どうしてだろう。銀が私のことを決めても、いいような感じがしてくるんだ。
おかしいよ。私、最近、おかしい。もっとしっかりしよう。うん。日本での私みたいに。

日本での私はもっと、冷たい。ひねくれもので、よく友人を困らせた。そんなことが、懐かしくなってきている。大変だ。私はこっちの世界の人間ではない。それを忘れてはいけない。

「アシュリーは優しいよ。パルも優しい。ちょっと意地悪だけど、でもアイツは頭が良いから、俺をバカにしても、俺は文句言えないんだ」

少々言葉に痞える銀は、バカというより、幼稚というか、子供っぽいんだと思う。
パルは頭がいいのか。私の友人も、頭がよかった。よく、勉強を教えて貰っていた。一緒の大学に行こうって話し合ったっけ。
私、帰ったらもっと真剣に勉強しようかな。どうせ気まぐれだけど。でも、なんとなく今は、友人と勉強したい気分なのだ。
いつもは教えてもらってもあまり聞いていなかったけど、これを機に心を入れ替えるかな。

「パルは、魔術が使えるんだぜ」

魔術。また知らない単語が来たぞ。
この世界にはあるのか。その、ライトノベルのような魔術とやらが。
一度は見てみたいかもしれない。
そうすると、やはり黒ずくめの姿を想像してしまう。

「俺、バカだからよく分からないけど、でも、パルは多分、いいところで育ったんだって。ムーヴィはそう言ってた」

いいところ? つまり、貴族とかお金持ちだってことだろうか。そうなると黒ずくめの態度がでかい人を想像する。
そんな人とはまり関わりたくないかもしれない。でも、銀が懐くなら、きっと良い人なんだろうな。よく考えると、銀は私にも懐いたし、私みたいな嫌な奴かもしれない。
そうしたら私、パルときっと喧嘩しちゃうな。私、友人みたいな穏やかな人間じゃないと仲良くなれないし。
友人と出会えたのは、今考えると奇跡だったんだ。私にあんなに合う人間と出会えたなんて。

「俺、自分が生まれたとこ、あんまり憶えてない。ムーヴィやパルは、憶えてるって言ってる。アシュリーは分かんないけど、羨ましいな。俺、自分が小さい時のこと、全然憶えてないから」

銀のあまりまとまっていない話を聞いていると、無意味に息が詰まる自分がいるのを感じた。


〜つづく〜


十八話目です。
話が進まない。落ちが決まってない!