複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を(略)参照500なので少しずつ誤字修正 ( No.104 )
- 日時: 2012/06/02 12:17
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)
19・未来を見ていることに気付いてる?
「おはよう」
まだ眠たそうなアシュリーを見ながら、呟いた。アシュリーは隈のある目をこすりながら、笑った。昨夜は魔術ができたことが嬉しくて、あまり眠れなかったのだろう。いつ話してくれるのか、楽しみだ。
「おはよう、パルは朝から元気だね」
「そんなこと無いよ。アシュリーは眠そうだね。どうしたの?」
俺が意地悪でそう聞くと、アシュリーは目線を逸らす。秘密にする気らしい。楽しみが増えた。
きっとアシュリーはまだあの程度の魔術が使えるようになったくらいじゃ、満足していないだろう。それならまだ練習するだろうか。でも、だったら何か教えた方が良いだろうか。俺は人に魔術を教えたことがないから、分からない。
いつも、教えられるばかりだった。母さんは、俺にどんなふうに魔術を教えていただろうか。
少しなら思い出せるが、だめだ。母さんが俺に教えていたようなやり方を、アシュリーにできるわけがない。あんな方法、むちゃくちゃだ。でも、すぐに覚えられなかった、俺も悪い。俺は、バカだから。
「別に、なんでもないよ」
笑うアシュリーが、愛しいと思う。守りたいと思う。初めての感情だ。生まれて、初めて。母さんに抱いた、『愛しい』とは違う。いや、根拠はないが、違ってほしい。母さんとアシュリーが同じなんて、思いたくないから。俺は、母さんをどう思っているんだろう。母さんを引きずりすぎだ。もっと今を見ないと。
「お腹空いてないか?」
アシュリーの手を握って立ち上がらせた。
もう何日も何も食べていない。俺は別に何ともないが、アシュリーはどうだろう。魔術も使い、歩き回っている。それに、アシュリーは女だ。体力もない。俺も体力に自信はないから、何か食べておかないと動けなくなってしまう。
「え、大丈夫だよ……。パルこそ、お腹減ってるでしょ? 魔術いっぱい使ってもらったし」
アシュリーは申し訳なさそうに、俺の顔を覗き込んでくる。魔術を使わない俺に価値なんてないし、俺が好きで魔術を使ったんだ。だからアシュリーが落ち込む必要なんて無いのに。
アシュリーはとても優しい。そんなアシュリーと俺は一緒に居ていいのだろうか。
不安になる。
「俺は平気。アシュリー、なんかして欲しかったら、遠慮しないで言って」
俺でよかったら、何でもやる。
なんでも。
〜つづく〜
十九話目です。
二十話目が近づいてきているけれども、全然進まないよ!
喉痛い!