複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。【題名変えようかな】 ( No.107 )
日時: 2012/06/07 21:18
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)



22・自問自答、やっぱ分からん。


「あんまり、あの女に関わらない方が良い」

外に出て行ったムーヴィーは、言った通りすぐに帰ってきた。何やら怒っているような声が聞こえたけれど、何かあったのだろうか。よく分からない。俺は、バカだから。
ムーヴィとアイツが喧嘩したのかな。それは大変だ。みんながみんな、仲良しでいるべきだと、俺は思う。

「なっなんでだよっ! 何もアイツはしてないだろ!」

一度一緒に行くと決めた相手だ。今になって置いていけるわけない。ムーヴィのことが時々分からなくなる。
感情に任せて立ち上がろうとする俺を、ムーヴィは冷たい目線で見下ろしていた。
久しぶりに、彼の瞳と目が合う。慣れない。この目にはどうしても違和感を感じてしまう。
怖い、かも。

「確かに、アイツは何もしていないよ。……だから、だよ」

「え?」

何もしていないのが、ダメなのか。
だったら俺も何もしていない。何もかも、アシュリーたちに任せて。俺はみんなが切り開いてくれた安全な道を、進むだけ。俺だって、ダメじゃん。

「俺は怪しいと思う。普通、いきなり現れた人間に付いて行くか? 俺はしないな」

よくよく考えてみる。いきなり現れた、人間? 確かに、付いて行かないかもしれない。だって怪しいし。何されるか分からないし。
俺だってそう思うのに、アイツはそう思わなかったってこと?

「確かに、変、かも」

「だろ?」

そう言ってムーヴィは微かに視線をドアの方に向けていた。
でも俺は、頭の中がこんがらがって、あまり気にしなかった。


 + + + +


別にショックじゃなかった。ドアに寄りかかりそうになって、慌てて自分の体を支え直す。
銀が自分のことを不審がらないのが変なんだよ。普通疑うだろ。変だって。こんな所に1人で立っているのもおかしいって、声かける前に思うはずなんだよ、普通はさ。でも銀はバカだった。私が想像しているよりも、ずっと。私を全く疑っていなくて。バカなんじゃないの。バカだけどさ。

「……さてと」

そろそろ潮時かな。まだ全然経って無いけど、余所余所しくされるって言うか、そうされると居ずらいし。ムーヴィは私をよく思っていないみたいだし。わざわざ自分の事が嫌いな人と一緒にいる必要なんて無いしさ。だからそろそろ1人で行かなくちゃ。帰る方法を探さなくちゃ。別に2人のことなんてどうでもいいし。銀に疑われるのも、ヤダし。

私は静かに立ち上がって、当てもなく歩き出した。

また1人か。

風が少し冷たくなった。


〜つづく〜


二十二話目です。
累計どれくらいなのかな。
また新キャラを思いついたので当分は終わらないかと。