複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。【題名変えようかな】 ( No.108 )
- 日時: 2012/06/08 18:43
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)
23・彼らの信頼を得ること。
足が疲れた。私はあまり運動が好きじゃない。面倒だし、できないし。だからあまり積極的に授業を受けていなかった。成績も良くなかった。
帰ったら、何か運動をしてみようかな。友人も誘って。アイツも確か、運動は好きじゃなかった。なんかしよう。アイツとなら、何かできる気がする。続けられるような気がする。
振り返ってみると、まだ小さく馬車が見えた。私が居なくなったこと、気が付いているかな。
「……探して欲しいみたいじゃん」
私は自分の頭を数回振って、目を覚まそうとした。
何だか私、本当に、探して欲しいみたい。見つけて欲しいみたい。どうせ私が居ないって気づいても、追ってくるわけ、探すはずなんかないのに。どうして、こんな気持ちになるのかな。変なの。
いつからこんなにも、人に甘えるようになったのだろう。コッチに来てから? どうして。コッチとアッチの私、何が違うっていうの。何も違わないよ。証拠も無いのに、言いきれないけどさ。
私は草原の風に背中を押されながら、歩を進める。
行く当てなんか無い。ただもう、あそこ居たくないだけ。ムーヴィの意思に沿うだけ。ムーヴィは私を疑っている。多分、銀たちを追っている誰かの、仲間だと勘違いしているのだろう。私はそんなのじゃ無いけれど、ムーヴィは用心深いし、私が確かにその敵の仲間じゃないなんて証拠はない。だって私はここに居ないはずの人間なのだから。
2日程度過ごしてみて、分かった。確かにここは日本じゃない。地球でも無いということ。馬車を牽いていた動物が、私をその結論に導いた。地球にあんな生物は存在しない。見たことも、聞いたこともない。
それに銀やムーヴィ。なぜ言葉が通じるのかわからないけれど、銀のあの髪色、目の色からして、地球人だということはまず考えられない。染めているにしては、綺麗すぎる。
銀の言っていた『魔術』。それも地球には存在しない。ファンタジーの世界にはある。つまりここはファンタジーの世界。私はここにトリップして来てしまったというわけだ。
実感は湧いてきた。少しだけ。帰りたい。もちろん帰りたい。ここにきて、なんだか急に家族が懐かしくなった。私は家族には無関心で、あまり関わりがなかった。そんな私を、この世界が変えたのだ。いい進歩だと思う。
後、友人にも会いたい。友人と一緒にやりたいことが、増えた。実感することができた。アイツは確かに、私の正真正銘の親友であると。これもいい変化だ。コッチに来て、何のデメリットもない。
そのはずだよ。
〜つづく〜
二十三話目。
そろそろ本気だします。多分。