複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。【題名変えようかな】 ( No.109 )
- 日時: 2012/06/08 19:24
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)
24・絶対だよ。
「ごめんな、アシュリー」
いきなりだった。歩いている最中に、パルが急に黙り込んだと思ったら、口から出た言葉がこれだ。意味が分からない。
私は唖然としてしまって、声が出せなかった。パルは何か、自分を追い込んでいるように見える。そんな彼に、私は何か声をかけなければならないはずだ。それが私にできる唯一のことなのに。それすらもできないほどに、喉が詰まる。
「アシュリー、俺が悪いんだ」
彼は目を伏せている。
私は本当に動けないでいた。どうすれば良いか、分からなくなってしまった。パルは比較的落ち着いているから、自分の事はちゃんとしていると思っていた。だから、私が口に出さなくても、意志は固めていると、思っていたのに。
なんか、私、嫌な奴だな。パルだって、人間だ。それに、みんなに比べて年下だし。それなのに、しっかりしているって勝手に決めつけて。彼だって、大丈夫じゃないときくらい、あるよ。それが、普通だよ。パルは何も悪くない。何も。
「ねぇ、何が?」
私は彼を責めないように、柔らかい口調で言った。責めたら、壊れてしまうような気がした。
それほど、今の彼は脆く見える。
「俺が、もっと魔術を使えたら、そうしたら、銀たちと逸れる事も無かったのに」
パルのせいじゃない。あの赤髪が悪い。アイツは私たちを追っている。なんで。それは私たちが、犯罪者だから。あそこから抜け出した。あの地獄から。地獄から逃げて何が悪い。幸せを求めて、何が悪い。私たちが、何をしたっていうんだ。
教えてくれよ、アスタリスク。
そこで見ているだけじゃなくてさ。
+ + + +
「ねぇーえ、春海」
「なんだい、ド変態アスタリスク」
ド変態は余計だな。
そう思って、くすくすと口の中で押し殺すような笑いをした。
「その笑い方、私の可愛い愛娘に付きまとってる男に似ているからやめろ」
表情を曇らせる春海に、笑いが止まらない。
どんどん不機嫌になる春海。ねぇねぇ、結構その顔好きなんだよね。
春海の澄んだ湖のような瞳に、自分の姿が映っている。
「ちゃんとしてた、つもりなんだよ」
「じゃあ逃げるわけない」
不機嫌な春海にそう言われると、妙に納得した。
そうだね。
銀孤。ムーヴィア。パル。アシュリー。
帰ってきたら、絶対に逃げないようにしてあげなくちゃね。
〜つづく〜
二十四話目です。
新キャラですぎ? 春海は新キャラじゃないですよー(にやにや)