複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。【題名変えようかな】 ( No.111 )
- 日時: 2012/06/08 21:56
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)
26・最終的に、結論。
「そういえばさー、アイツの名前聞いてないよなー」
俺の話を聞いた後なのに、コイツは恍けている様な口調で呟いて、立ち上がった。
何をするつもりなんだ。
俺は焦った。
まさか、銀がここまでバカとは。
「おい、どこ行くんだ」
俺は銀の腕を掴んで、責めるような口調で言う。
今の話で、分からなかったのだろうか。
「はぁ? アイツにまだ『オハヨー』言ってないし」
何を当然のことを、という風に、銀は眉間に皺を寄せた。俺は銀の腕を握っている手に、力を込めた。銀は平然としている。
銀は痛みに強い。というより、疎いのだ。いろいろな痛みを、味わってきたから。心も、体も、ぼろぼろだから。銀自身はきっと気がついていない。麻痺しているんだ。自分が傷ついているのにも気が付かないくらい、痛みに疎くなってしまっている。
「……言う必要はない」
銀の腕はとても細い。線が細い体に、無数の傷がついているのを、俺は知っている。
俺は銀を守りたいんだ。
なのに、どうして、銀は俺の言う通りにしてくれないんだ?
「なんでだよ、別にいいじゃんか。あ、ムーヴィ、『オハヨー』」
「……おはよう」
違う。そうじゃないよ。そうじゃない。俺はそんなことがしたいわけじゃなくて。
俺がため息をついたのに気付いたのか、銀は首を傾げた。
疲れる。銀と居ると、自分が何をしようとしていたのか、何をしなければならないのか忘れてしまう。
毒されてくなぁ。
「なぁ、銀」
「なんだー?」
銀の銀髪が揺れる。もう何日も洗っていないのに、輝きを失っていない。すごいよな。少しく癖っ毛なのが残念だ。
「……アイツはもう居ない」
銀はバカだから、正直に、単刀直入に言わないと、分からないだろう。
俺はそっと、銀の頭を撫でた。
「え、なんで?」
銀の瞳の色は、綺麗だ。パルも気に入っているらしい。綺麗な色だよな。銀だから、似合うんだよな。
「……アイツと一緒に居たいか?」
俺の質問に、銀は驚いたようだったが、間もなく笑顔で頷く。
「あぁ! だって『一緒に行く』って言ったしな!」
あぁ、もう銀が良いなら、それで良いかも。
〜つづく〜
二十六話目です。
今日はたくさん更新。
ちょっと病んでる感じが出てるのは病んでる小説を書いてしまっているからです。ごめんなさい。