複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。【題名変えようかな】 ( No.112 )
日時: 2012/06/08 23:05
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)



27・彼の青と黄。


「帰りたい」

疲れた。もう一歩も動けない。
このまま眠ったら帰れないかな。
移動方法が良くなかった。2人を馬車から追い出してから、1人で馬車を動かせば……いや、ダメだ。あの2人を追い出せる自信がない。銀はまぁ、騙せるとして、問題はムーヴィである。自分の顔も見せないような男が、他人をすぐ信用するわけがない。
しかも、私なんかを。

「失敗したなぁー」

地べたに座り込んでいるのも面倒になって、ついには寝っころがった。
もうどうでもいいや。
正直に言うと、出てきたことを後悔している。もうちょっと一緒に居ても、良かったかな。
いやいやいや、そんなことはないよ。
だっていつ帰るか分からないんだし、あまり親しい人を作らない方がいい。私が居なくなって悲しい人なんて、滅多に居ないだろうけど、なんか置いてきたみたいで、後味が悪そうだ。

「……?」

なんか今、音した?
嫌な予感がして、身を起こす。なんだ、この嫌な感じ。

「っ!」

また、だ。
変な音。何かの鳴き声? 分からない。聞いたことのない音だ。
怖い。怖い。怖い。

なんでこんなところに来ちゃったんだろう。
日差しが嫌で、森のような木が生い茂ったところに来たのが、間違いだった。
バカだ。どうして。ヤダ。怖い。

「助け、て……」

足がすくんで動けない。こんなときに。この世界には何が居るか分からないのに。
嫌だ。怖い。

「達羅銀孤、さんじょおおおおおおおおおおおおおおおお!」

たつら、ぎんこ?
聞こえた大声と、やたらうるさい足音が聞こえて、息が詰まる。
え、なんでだろ。
なんで、2人がここに?

「やっっっっっと見つけたぜっ!」

銀は私を指さしながら、迫ってきた。
腰が抜けているようだ。銀たちが来たことに、驚いたのと、相当不気味な鳴き声が怖かったみたい。
私、弱いな。

「ぇ、あ」

声も出ない。変だ。銀を見上げるばかり。少し後から、ムーヴィもやって来た。ムーヴィは私に近づいてくると、眉を顰めて浅黒い肌をした手を伸ばしてきた。

「こんなところに居たのか。面倒な奴」

「……フード、は?」

ようやく声が出て、気になっていたことをムーヴィの瞳を見つめながら問う。

「……別に何でもいいだろ」

ムーヴィは照れたようにそっぽを向く。
ムーヴィの瞳は、綺麗な黄色と青。信じられない。
ムーヴィの瞳は右目が青、左目は黄色。髪は右半分が黄色、左半分が青。
不思議で、ありえない色合いだ。銀以上に。だが私は、言った。

「綺麗」


〜つづく〜


二十七話目です。
データ吹っ飛んで書き直しました。