複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。【題名変えようかな】 ( No.113 )
日時: 2012/06/09 12:31
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)



28・保証はないのに。


「ねぇ、パル、見てて」

俺が落ち着いた頃、アシュリーが歩きながら俺を振り返ってきた。俺は軽く笑う。
今日の雪はあまり多くない。さらさらした、きれいな雪で、歩きやすい。視界も広い。今日のうちに進んで置いた方が良いだろう。

「…………」

足を止めて、アシュリーが息を吸う。瞼を閉じる。

「……汝yo我nokoeni答eyo我汝no力wo望mumono」

しばらく黙りこんでから、アシュリーの口から、詠唱が紡がれた。

すごい。アシュリーには素質があったのだろうか。まだ拙いものの、言葉に魔力が詰まっている。綺麗だ。

「我no心ni凍tetuku贐wo」

アシュリーが薄目を開ける。まるで物人のようだ。
心がここにないような。でも、立花ならアシュリーを、アンダープラネットに連れて行く心配もない。ときどき、アンダープラネットに、詠唱して居る人間を連れて行ってしまうことがある。力量がなかったり、魔術を乱用したり、アンダープラネッターに気に入られたり。そうすると心が持って行かれてしまう。つまり、体をアンダープラネッターに乗っ取られるということだ。アシュリーがもし立花に乗っ取られても、俺がいるから大丈夫だ。もう、アシュリーを守れる。そんな自信がある。それに、アシュリーを守るのは、俺だけじゃない。

「『立花』-----霜降り」

目を一気に開く。そして、辺りの草に、白い霜が降った。俺の靴も、少し白くなる。寒いより、冷たい。その様子を見て、アシュリーが嬉しそうに、俺に笑いかけた。

俺はそんな彼女に精いっぱいの拍手を送った。

「すごいよ、アシュリー」

「また魔術教えてね」

照れたように笑う彼女に、俺は約束をした。

さぁ、銀たちを探しに行こう。
俺たちなら、大丈夫だ。


〜つづく〜


二十八話目です。
そろそろ終わり。でも短め。