複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。【題名変えようかな】 ( No.114 )
日時: 2012/06/09 13:29
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)



29・独裁政治、我儘。


どこで、失敗したんだと思う?
分からないんだよね。
しっかりやって来たつもりだった。
つもりで終わってたってことかな。

銀孤。達羅銀孤。
お前は大切にしてきたんだよ。頑張って育ててやったじゃんか。痛みを感じないようにしてあげて。体も改造してあげて。他の奴らよりもまともなもの、食べさせてやったろ? ときどき風呂にも入らせてあげたし。外が見たいっていうから、お花を摘んできてあげたりもした。どこが不満だったの? どうして逃げるんだよ。どうして。お前はバカで、頭が足りないから、逃げるとか、そんなことは考えられるはずなかったんだ。
でもアシュリーが。アイツが。アイツが裏切るなんて。思いもしなかったよ。計算外だった。自分から探しにはいけないから、他の連中に任せてある。
早く帰ってこないかな。会いたいんだよ。大切な、愛する、お前たちに。他の連中はみんな帰って来たよ。まぁ、お前ら以外は気に入って居なかったから、すぐに捨てちゃったけど。でもお前らが帰ってきたら、捨てるなんてもったいないこと、しないよ。また可愛がってあげる。お気に入りだから。

「……壊れちゃいそー」

「もう壊れてるよ」

春海は偉そうに椅子に座っている。
コッチの苦労も知らないで。

「春海、まだ見つからないの?」

相当経った。もう我慢できないよ。早く帰ってこいよ。会いたいよ。お前らが掌の中にいないと落ち着かないの。自分の物が無くなった感覚なんて、味わいたくなかったのに。

「アスタリスクが作った人間だ。そう簡単には見つからないようだよ」

作った、か。確かにそうかもな。育てた、より、飼ってた、の方が近いからね。
落ち着かない。もやもやする。

アシュリー。お前はいつまで経っても狂わなかった。しっかりしてて。目から光が消えなくて。気に入らなかったけど、それで、好きだった。いつか堕としてやるって思ってた。
パル。お前は魔術がすごかった。お前の母親が愚かだったね。母親とは親しい方だったから、ずっと前からお前の事は知っていたんだよ。それで、欲しいと思った。だからすぐにお前を引き取ったんだ。魔術を使わせて、世界一の魔術師にしようと思ったんだ。
ムーヴィア。お前は最初から狂っていたね。お前のその奇妙な髪と目を、すごく気に入ったんだ。だから救ってやったろ? お前の両親とお前のことをバカにする村を、滅ぼしてやっただろ。知ってるか? 救ってやるって言ったら、お前の両親は、お前を喜んで差し出してきたんだよ。いつか言ってあげるよ。お前はどんな顔をするかな。
銀孤。お前の瞳の色は、綺麗だ。何もかも、お前は綺麗だ。穢れを知らない。唯一ある欠点は、このアスタリスクの所有物だってこと。誰にも渡さない。銀は誰にも。魔術だけはどうにもできなかったけど、体は丈夫になった。自分で自分を壊すようにした。自分の限界に気が付かないうちに、朽ちる。その最後を見ていいのは、このアスタリスクだけ。

「そうだろ?」

お前たちは、逃げられない。


〜つづく〜


二十九話目です。
そろそろ終わりだけど、全然うまく書けなかった……。