複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。【題名変えようかな】 ( No.116 )
- 日時: 2012/06/09 14:40
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)
31・これでいいんだ。
目を開ければ、線香の香り。
あぁ、帰ってきたんだ。
私の近くにいる両親は、私の顔を心配そうに見つめている。
大丈夫。私は、大丈夫。もう逃げない。私は逃げてきた。真実から、現実から目を逸らした。その結果が、あれだ。
不思議と、私の心は落ち着いて居た。あっちでは2日間くらい過ごした。でもこっちの時間にすると、一瞬の出来事のようだった。
私は動きにくい服で、前に進む。
作法とか、分からないよ。分からないよ。でも、逃げないの。約束したから。夢じゃない。あれは、夢じゃない。夢だったとしても、私はもう逃げない。そうでしょ、ムーヴィ。
銀。ごめんね。私、貴方たちと一緒に行けないよ。私の居場所は、こっちにあるから。
それがたとえ、もう友人の居ない世界でも。
私は友人の顔の横に、花を添える。
私はもう二度と目を開くことのない君を、見つめる。
つん、と目の奥が痛くなって、世界が歪む。声が出ない。
約束、したじゃんか。
また一緒にカラオケ行こうって。アルバム買いに行くんだろ。後さ、勉強も教えてくれるって、言ったろ。お前が言い出したんじゃん。それと、漫画返して貰ってないし。見に行こうって言っていた映画は、どうなったんだよ。全部、ドタキャンかよ。そりゃないよ。
「そりゃ、ない……よ」
嘘吐き。大嘘吐き。
私、楽しみにしてたんだよ。お前と2人でいるのは楽しいし。それに、何より、さ。
好き、だったんだよ。
お前が好きだった。幼馴染だったけど、一緒に居てくれて、気にかけてくれて。最初は憧れに近かったけど、素直じゃない私は認めなかった。それで、気が付いたら好きで。
好き。好き。好き。好き、だったんだよ。
言えなかった。言ったら、嫌われてしまうような気がして。バカだよね。バカだ。それで言わなかったら、逃げてるのと、一緒じゃんか。
逃げないんだ。もう、逃げない。
私は笑った。顔はぐちゃぐちゃだって、分かっていたけど、それでも、笑わなくちゃダメだって、思ったから。
「好きだよ」
過去形じゃなくてね。
今でも、思い出すたびに、君が好き。
〜end〜
三十一話で完結!
今回は彼女が救われるのが目的だったので、銀たちは再会しません!w
それでは話は戻って四章は久しぶりに雪羽ちゃんたちのターン!