複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世(略)【参照600あざます!三章→四章へ!】 ( No.123 )
- 日時: 2012/06/22 20:37
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)
7・本心は見えなくていいのです。
意味が、分からない。アスラの言っていることが、全く分からない。赤女と居たら、いつか?
何を知るっていうんだ。
それは、悪いこと? 知らない方が、良いこと?
そんなことを、あの赤女が抱えているっていうのか。
バカな。そんなはずがない。あの赤女は、いたって普通で。弱いだけの。そんな人間だ。
「……俺は」
俺は。俺は。俺は。何を言おうとした。
何か、言葉が浮かんでいたのか。いや、違う。何も、浮かんでいなかった。でも、何か言わないと。何か言わないと、溢れてしまいそうだった。心の奥の、何かが。
俺が自分自身の行動に疑問を持っている間に、アスラはパンが入っていた袋をたたんで、ポケットに突っ込んだ。
「お前は、どうしてあの女と居る」
初めて、問われた質問だった。
そうだ。俺は、赤女と居る必要がある。俺は、赤女と居る理由を持っている。でも、赤女は? 赤女は俺と居る理由があるのか?
無い、だろうな。アイツのことだから、考えてもいないだろう。
アホとバカ。あの2人は今頃、大丈夫だろうか。アホはそれなりに強いのだろうか。なんせ、自分で言うくらいだ。少しは強いのだろう。でも、アホの自画自賛の言葉を、俺は信じたのか。そう思うと、俺もバカなことをした。
「誰がお前に教えるか」
そう強がると、アスラは俺を鼻で笑う。
「そうか。なら、無理には聞かない」
そう言ってアスラは、俺に挨拶もしないで人ごみに消えていった。俺はしばらくアスラが消えた方向を眺めていたが、飽きて視線を上に向ける。
今日は晴れている。
良いことは、なさそうだな。なんて思ったのに、なんだか今日が終わるのが惜しい。
+ + + +
「足跡」
信じたくないな。でも、信じなくちゃ。私は、もっと頑張らないといけない。ライアーに頼っているばかりでは、いられないのだから。
足が震える私を心配そうに見つめながら、凪が立ち上がる。
「なんや、どないかしたの」
凪の声は、安心する。言葉はへんで、意味が分からないこともあるけど、でも、それがどこか柔らかくて。私は、好きだ。この喋り方が、好きだ。全てを包むような、暖かい声。凪もきっとそんな人。
「いける、ワシがおる」
凪の笑顔も、安心する。
それがちょっと引き攣っていても、大丈夫。少なくとも、そう思っていないとやっていけなくなるのは、確か。
〜つづく〜
七話目です。
最近放置気味。