複雑・ファジー小説

Re: 赤が世(略)【参照600あざます!三章→四章へ!】 ( No.126 )
日時: 2012/06/29 19:54
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)


10・悩み事の朝。


ライアーと凪は、どうやら馬が合わないようで。でも、ライアーがはっきり関わるなって言わないから、良いんだと勝手に思って。それで、まだ凪とは仲良くして居る、けど。ライアーの本心は、どうなのだろうか。
凪とは一緒に居たくない? そうなのだろうか。
凪は決して、悪い人じゃない。きっとライアーもそこのところは分かっていると思う。じゃあ、なんであんなにライアーは不機嫌そうなのだろう。何に、誰に、怒っている? 凪じゃ無いなら、カーネイジ・マーマン?
……私? 私か。私だな。いつまで経っても成長しない、私のせいかもしれない。凪と関わるのが嫌なら、似たようにバカっぽい私も、面倒に違いない。ライアーは、何のために私と居るのだろう。

「……雪羽ちゃん?」

手を止めている私の顔を、心配そうに覗き込む凪。そういうところも、優しい。アホっぽくて、少しマナーが悪いけど、良い人だ。この人は、良い人。裏表が無さそうな、本心がそのまま形になっているような、そんな感じ。だから、一緒に居ると、落ち着く。

「あ、いや、なんでもないです」

私は慌てて包丁に力を込めて、野菜を切る。早くしないと、ライアーが起きてしまう。

ライアー、私と、何のために一緒に居るの。それを聞いたら、なんだか離れてしまうような気がする。私は、ライアーと一緒に居たい。できれば、凪とも。だって、楽しいし。毎日が、楽しくて、楽しくて。私には、もったいないくらいで。

「なぁ、どないかしたのか」

隠していたつもりなのに、凪はあっさりと私の手を握って、私の不安を見抜いてしまう。
危ないよ。包丁持っているのに。私がもし悪い人で、凪を刺してしまおうなんて思っていたら、どうするの。単純で、人をすぐ信じる。すぐに壊れてしまいそうで、怖い。

「なんでも、無いですって」

苦しいな。ライアーの本心が知りたい。ライアーは隠して欲しいところを隠さないで、表情に『嫌』って出すのに、肝心な私を安心させてくれるような表情は、作らない。私はそれほど取るに足らない人間だろうか。
凪はため息をついて、私の手を握る手の力を、強くした。

「ワシに、頼れや。頼りにしてくれや」

頼るか。頼ってしまっていいのか。頼って、どうなる。私とライアーのことを知らない凪が、力になるのか。ならない、なるの問題ではない。気がする。凪に話せば、気が楽になるのか。なるだろうな。話すか話さないでは、大きな違いがあるから。

「ワレはどないか知らねんけど、ワシ、ワレのこと、好きやからな」

でも、凪が悲しそうな声を出すものだから、ぐっと言葉を飲み込んだ。


〜つづく〜


十話目です。
遅いかもです。