複雑・ファジー小説

Re: 赤が世(略)【参照600あざます!三章→四章へ!】 ( No.129 )
日時: 2012/06/29 20:20
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)



11・パラパラサイト、パラサイト。


1人で居ることが、怖かった。1人で居ると、自分が見えなくなりそうで。人に否定されると、壊れてしまいそうで。
だから、森の中でうろうろして居る彼女に迫るビーストを、すぱっと処分して笑顔を作り話しかけた。彼女はどうやら、薬草採取に夢中だったようで、ワシの行動に気が付いていなかった。全く、危なっかしい。
最初は警戒して居たが、ワシが笑えば、どんどんと壁を崩していって、ついにはホテルにも招いてくれた。やった。これで金が浮く。なんてことを考えながら、彼女と話した。
彼女はどうやら、連れに不満があるようで、連れの話をしていると時々悲しそうな顔を見せる。どんな男なんだと思って居たが、やはりなんだか予想通りだった。
不機嫌そうで、常にめんどくさそうな、そんな男。こんなんじゃ、女をひっかけられない。でも、このミステリアスな雰囲気に呑まれる女も、少なく無いだろうな。
追い出されるかと思ったが、意外にもこの男ははっきりとワシを否定しない。なんだよ。調子狂うな。そして迎えた、3日目の朝。

「おい、赤女、飯は」

後ろから聞こえた声に、ワシはそっと彼女に重ねていた手を離した。彼女は振り返ると、笑顔を作った。下手糞。そんなのじゃあ、ばれるぞ。不満だって、不安だって、事が。

「あ、おはようございます。ごめんなさい、ちょっと待ってて下さいね」

そして再び、まな板と向かい合う。ワシにだけしか聞こえていないと思うが、ため息をついた。

「早くしろ」

人の心情が分からないこの男は、大げさにため息をついて、ベッドに寝転んだ。
ワシはその行動が、なんだか嫌でライアーの隣に寝転んだ。
なんで、わざわざ人を突き放すようなマネ、するんだろう。ワシには考えられない。何時だって、仲の良い人は多いほうが嬉しいのにさ。

「……なんか用か、離れろ。用が有っても離れろ。そして朽ちろ」

さらりと暴言を吐くライアーの髪を、軽く撫でる。
昨夜ライアーに同じことをされたのは、やはり夢かな。だって、ライアーがそんなことする筈無いし。
しばらくしても、最初会った時のように、振り払われることは無かった。
結構、馴染んできてる? やったね。
このままコイツ等と旅をするのも、悪くないかもしれない。

「別にええやがな」

喉の奥で声を押し殺しながら笑うと、口の中がムズ痒かった。

「良いわけないだろ」

そう言ってワシの掌を抓るライアーの口角が、少し上がって見えたのは、気のせいだ。


〜つづく〜


十一話目です。
最近頑張っていますよ。