複雑・ファジー小説

Re: 赤が世(略)【参照700あざます!】 ( No.130 )
日時: 2012/06/30 21:07
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)



12・誰も悪くないと信じれば、誰も救われない。


俺は、関係ない。朝起きて、赤女の手を凪が握っていたとしても、俺には関係ない。そうだろ。それなのに、俺は。
不機嫌そうに飯を食べる俺を、赤女が不安そうに見つめている。

「あの、何か変なことでも、」

「ある」

即答した俺に、赤女は首を傾げた。ちなみに凪はもう居ない。凪は今日、いきなり立ち上がったと思うと、今日は1人で行く的なことを言ってさっさと部屋から出て行ってしまったのだ。意味が分からない。
それから、赤女は黙ったままで。でも、今になってやっと、俺に話しかけてきた。

「えっと、ごめんなさい、作り直しましょうか」

スプーンを置いて、立ち上がろうとする赤女を睨むと、大人しくなって再び席に着く。俺はため息を吐いた。食事が喉を通らない。どういうことだ。俺もスプーンを置く。

「飯じゃない」

そう言って、ため息がまた込上げて来たが、飲み込む。
あまりため息を付くのは良くないと、言われた。
アイツは今、元気だろうか。俺に面倒なことばかり押し付けて。きっと昨日俺に電話を寄越して、仕事を押し付けたこと奴のことも、アイツは知らないだろうな。気が付いているとしても、アイツに付きっ切りのユコトだけだ。多分。でもアイツも結構、頭が悪いからな。

「凪さんのことですか」

俺が顔を伏せて、少し汚れているテーブルを見ていると、赤女が言った。俺は驚いて、顔を上げた。
赤女は、なんだか泣きそうな顔をしていた。なんで。なんでだよ。なんでお前さ、すぐそんな顔、するの。意味分からない。そして、なんで俺、この顔見るとこんなに瞬き下手糞になるの。目が、乾く。

「凪さんが、嫌いですか」

赤女がその表情を消す。そして。俺を責めるような、そんな顔に変った。どうして。なぁ。俺の方が、お前と一緒に居たじゃないか。それなのに、どうしてお前はそんな、凪を庇うような態度を取るんだよ。
さっきとは違い、言葉を濁す俺に、赤女は唇を噛んだ。泣き、そう。泣きそうじゃんか。なんで。なんでこんなことに。前も、こんなことがあった。赤女、本当にめんどくさい。ここで俺が動けたなら、こんなことにはならないんだけど。
俺が。

「嫌いなら、そう言ってくれませんか。そうしたら、私、」

妙なところで口を閉ざす赤女。今気が付いたが、赤女の皿にも、まだ結構な量の飯が残っている。俺と同じで、食事が喉を通らないのだろう。

「私、は」

赤女が俯く。
お前が、なんだ。俺が凪が嫌いだったら、なんだ。凪と別れる? 凪を追い出す? 凪と縁を切る?
それとも、俺と。俺と別れる?
なぁ、どうする。
赤女は、続きを言わずに、ホテルから走って出て行った。
逃げられた。
俺は何時、アイツに本心を言うのだろう。俺は何時、アイツを安心させてやれるんだろう。


〜つづく〜


十二話目です。
また喧嘩かよ。