複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世(略)【参照700あざます!】 ( No.131 )
- 日時: 2012/07/04 17:50
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)
13・感覚心中。
あの2人をホテルに置いてきたのは、ワシにしては名案だと思った。
ワシにしては気が利いていると思ったし、なんだかワシのせいでぎくしゃくして居るのを、2人で解消してくれると、思ったのだ。だって、ワシよりはずっと雪羽と一緒に居るわけだし、いくらあんなに性格が歪んでいたとしても、人の気持ち暮らしは、少しは、少しなら分かると思った。
それなのに。おかしいよ。おかしいだろ。どれだけあの男、性格が歪んでいるんだ。誰が、教育したんだよ。
「……ごめんなさい」
ぺこぺこと頭を下げる雪羽の黒髪を、撫でる。サラサラだなー。綺麗な黒髪だよな。ワシも自分の髪は自慢だけど、やっぱコイツの黒髪には劣る。きれいな黒髪。もっと撫でていたいけれど、ライアーの顔がよぎり、そっと手を離した。
聞いたところによると、ライアーの言葉を返すことができずに、気まずくなって部屋を飛び出してきたらしい。
涙ぐんでいる雪羽。前にもこんなことがあったそうだ。全部、自分のせいだと言う。ったく、女の子にそんなこと言わせるなよな。せっかく顔が良いのに、人が寄りつかないぞ。
+ + + +
「ぅ、くしゅっ」
書類を整理していたら、鼻がむずむずして、思わずくしゃみをした。
僕を見張っていたユコトが、自分の上着を素早く脱いで、僕の肩に掛ける。
「寒いのか」
近くにあったティッシュを手元に寄せて、鼻をかむ。
ゴミ箱に放り投げたけれど、はじかれた。
「ん〜、そういうわけじゃないよー。誰かが僕の噂してるんだよー」
きっとそうだ。だって僕は、健康だけが取り柄だし。まぁ、その健康も、ユコトが居ないと保てないけど。
ユコトの上着に、袖を通す。
温かいなー。段々と寒くなってきたし、少し暑い程度が良いかもしれない。ライアーは平気かな。寒いの、苦手みたいだしな。心配だなー。
「そうか、それなら良いが。クオ、人のことより自分を心配しろ」
ユコトは、僕のお母さんみたいだ。お母さんじゃなくて、お父さんだけど。
色素の薄い黒髪は、柔らかい光を反射している。落ち付くな。ライアーも、僕にとってのこんな人が、見つかるといいな。ライアーは、幸せになるべきだよ。
世界が何と言おうが、僕は、ライアーの幸せを祈る。今だって目を閉じれば、あの日のライアーが浮かぶ。怯えて。拒んで。そんな彼を、あそこまで変えたのは、僕だろ。僕が、自分で幸福を掴めるようにしてあげた。まだ、未完成だけど。
でも、世界を見るべきだよね。だから、手放した。
「ユコト、僕は間違っていないよね」
「あぁ、いつだってクオは正しいよ」
〜つづく〜
十三話目です。
おいまたキャラが増えたぞ。