複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世(略)【参照700あざます!】 ( No.132 )
- 日時: 2012/07/04 18:17
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)
14・月光で全て消して。
久しぶりに、俺が付いて行かなかった。というか、勝手にクオが出かけたのだ。危ないし、何より、俺が不安になるから止めて欲しい。
そして、クオが帰ってきたのは真夜中だった。玄関でずっと待っていた俺にクオは駆け寄って、そして背負って居た人間を、下ろした。
俺はすごく驚いて、声も出なかった。クオが、人間を連れて帰ってきたのだ。そこに驚いて、そして、その人間の染めたような赤い髪に、目を奪われた。辺りは暗いはずなのに、目にしっかりと飛び込んできたその色は、一言で言うなら無気味であった。
「ごめん、ユコト。でも、放って置けなくて連れて帰って来ちゃった」
申し訳なさそうに笑うクオ。まぁ、俺がクオを否定する理由なんて、いつだって、無いのだけれど。だから俺は、ぐったりとしている人間を抱き上げた。
薄汚れた服を着て、痩せていた。多分、孤児だ。そして、暴れた形跡もある。クオは暴れるコイツを、無理やり連れて来たようだ。いい趣味をしている。
「クオ、怪我は無いか」
パッと見ただけでは分からない部分もあるから、俺は人間に少し気を配りながら問う。コイツじゃなくて、クオを抱き上げるべきだったのだ。失敗だ。
そんな俺に、クオは笑った。
「無いよ!」
それなら良いんだ。
クオが笑えば、それで良い。
+ + + +
何はともあれ、だ。まあ俺は、赤女を手放すわけには行かない。俺は、あの黒髪が欲しい。だから、手放さない。
アイツが望むなら、凪とだって、仲良くしてやる。ただ、それをアイツが口にしないだけで。アイツは何を遠慮しているのだ。俺は、アイツを責めたりなんかしない。無理矢理に、付いて来て貰っているのだから。だから、俺に遠慮なんてせずに、俺にやって欲しいことは何でも言っていいんだ。それを、アイツは理解していない。だからほら、ハラダ・ファン・ゴだって連れてってやったろ。それが十分な証拠なのに。
赤女は全く、俺の気持ちを理解できない。まぁ、当然か。俺だって人の気持ちは分からない。赤女よりはバカじゃないが。
「申し訳ありません、ただいま列車は休行中でございます」
まず、ここから離れて、あの嘘くさい奴に押し付けられた、ゴールデンアームスの件を片付けなければならない。そのために、列車は必要不可欠なわけであって。
藍色の制服に身を包んだ係員が、俺に必死に頭を下げている。
「……は? なんでだよ」
俺の不機嫌さを感じ取って、係員のぺこぺこのスピードが上がる。俺は、急いでいる。早くアームスの件を片づけないと、アイツらが、カーネイジ・マーマンが何をしでかすか分かったものでは無い。早くしなければ。
クオは心配ない。ただ、クオの手を煩わせれば、当然ユコトが怒るわけで。アイツはクオにべったりだから。
「それが、ここ近辺の森に、ギガントが発生しまして……」
〜つづく〜
十四話目です。
なんか早いですが、そろそろ事が起きます。この章こそが、やっと、短めかもしれません。