複雑・ファジー小説

Re: 赤が世(略)【参照700あざます!】 ( No.134 )
日時: 2012/07/06 20:08
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)



16・精神安定剤は、赤色でお願いします。


「大丈夫やで」

そう言って私を落ち着かせてくれる凪。本当に、悲しくなってくる。ごめんなさい。申し訳ない。
人との関わりが増えるなら、人に迷惑をかける機会が増えること。そんなのは分かっていたし、覚悟もしていた。それなのに。覚悟。覚悟ってなんだ。私にとっての覚悟って。
このままじゃあいけないって、思ったばかりで。成長しよう。そう感じたばかりなのに。なぁ、私は何時まで、グズグズしているつもりだろう。

「大丈夫、ですよね。謝れば、平気ですよね」

私がライアーの気分を損ねてしまったことが原因で。
非は私にある。ライアーは悪くない。私が我儘を言わなければ良い話だ。そうすれば、ライアーが面倒な事は無くて、ライアーは楽に過ごす事ができる。そして、私もライアーと一緒に居られる。
凪は今まで、ライアーが厳しすぎると嫌味を吐いても、私にその思いを押し付けはしなかった。それは私がライアーのことを好きだって、知っていたから。異性的なことではなくて。
そもそも、恋ってなんだろう。私は恋をしたことが無い。憧れに近いのだろうか。それなら、私はダントツでお父さんが好きだ。だって、あの状況で娘を犯すなんてこと思いついて、更に実行したなんて。感動するな。私ならできない。凡人ならできない。痛かったし、頭が混乱したけど。
それでも。

『こうするしか無いんだ、お前だけでも、お願いだ』

お父さんの鋭い眼差しが、私を包んで。不思議と落ち着いていた。愛だけを感じていた。
私なら大丈夫。私は大丈夫。雪羽なら、大丈夫。それはお母さんの言葉。それを繰り返すことで、自分を支えた。

『この村は、狂っているのよ』

お母さん。お母さんは、そう言って悲しそうに笑う。それだけは、嫌だったな。

「アイツも、そないにあかん奴とちゃうやろ」

凪は私の歩調に合わせてくれる。
優しい。優しいね。私のお父さんと同じくらい、優しい。痛くて、怖い優しさだ。
あかん奴。
凪の不思議な言葉に、私は小さく笑った。それに気が付いた凪も、安心したように笑う。私の元気がないのが、そんなに心配だったのか。

「そーですねー、意外と優しいですよ」

助けてくれたことから始まって、ハラダ・ファン・ゴ。アスラ。ホテルでの喧嘩。色々。色々。
ライアーの落ち着く赤が、私は好きだ。それだな。ライアーの赤髪と赤目を見ていると落ち着く。心の中が、すっと暖まるような感覚。これが好きだ。赤が見ると妙に落ち着く。それが私の赤を追い求める理由。
生まれた時から、そうだっただろうか。なんか、引っかかる。私はそんなに昔から、赤が好きだったか。
記憶を引っ張り出そうとする私の隣で、凪が止まる。私もつられた。そして、凪の視線の先を見る。

「uraaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

最悪、だ。


〜つづく〜


十六話目です。
最近慣れてきたかも。