複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世(略)【参照700あざます!】 ( No.135 )
- 日時: 2012/07/07 15:46
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)
17・ぐじゅぐじゅぐじゅ!!
それは、紛れも無く目の前の生き物の鳴き声。凪も隣で呆気に取られている。あれが多分、あの足跡の主。
とてつもなく大きい。いや、私の人生の中で、あんな大きなビーストに出会ったことは無い。凪はどうだろう。ライアーなら、会っただけでは無い。戦っていそうだ。
それは大きな虫のようだった。紫色の固い甲羅の様な体。そこから延びる、2本の黄色い脚。鋏のように出っ張った歯。
きもい。きもい。毛が生えていないだけで、こんなにも不気味とは。
体中に鳥肌が立った。
「な、え、」
驚いて、口をパクパクさせるしかない。
ゆっくりと、こちらに向くギガント。鋏が開閉して、がしゃがしゃと変な音がした。その奥には、黄色い触手が蠢いていて。
あ、ヤダ。ヤダ。動かない。
どうしてこんな森にギガントが。全長、5メートルくらい。でかすぎるだろ。
「なにやっとるんや!! はよう逃げるぞ!!」
凪の声は理解できる。でも体動かないんだって。怖い。怖すぎて、息が上手くできない。動いたら、襲われそうで。怖い。怖い。
足がガタガタして。力が上手く入らなくて、腰から崩れそうになる。そこを、凪が抱き上げた。
「うっわ、!」
変な声が出た。でも、そのおかげで喉の何かが消えて、少しは息ができる。
凪は私を抱いたまま、走り出した。私は恥ずかしくて、身をよじる。凪の腕の力が強くて、安心する。
安心、できる。
「息を吸え! ちゃんと吐け!」
凪は頑張ってくれている。私の体を支えながら、全力で走ってくれている。私がべらべら喋って、大分奥まで来てしまったから、町までは相当掛かるだろう。でも、凪は希望を捨てていない。諦めていない。私だって。
私は深呼吸してから。体を起こし、凪の肩から後ろを振り返った。凪は驚いたが、すぐに抱き方を変えてくれる。
凪は力持ちだ。大丈夫。
「っ、凪さん!」
ギガントはすぐ後ろを走っていた。びっくりしたけど、私は怯まない。凪に心配を掛けちゃいけない。そう分かって。だから。
私は凪の背中に引っかかっていた猟銃を、構えた。背中の重みが減ったのに気が付いて、凪は笑った。
重い。でも、大丈夫。私の方が、重いし。
「いけ! ぶっぱなせ!!」
引き金を引けば良い。それだけの事だ。的は大きい。少し揺れるけど、頑張る。銃なんて使ったことない。でも、行くしかない。
凪は楽しそうだ。この状況のどこが楽しいんだ。私の指が引き金に触れる。その時。
「……え?」
目の前のギガントの口から、触手が伸びて、視界を埋め尽くした。
〜つづく〜
十七話目です。
銃は好きだけど知識は無いです。