複雑・ファジー小説

Re: 赤が世(略)【100話超えてた】 ( No.138 )
日時: 2012/07/11 18:29
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)


20・優柔不断の末路。


地面に指を這わせて、銃を手に取った。大丈夫だ。このビーストを倒して行こう。じゃないと、安心して逃げる事なんかできない。当たれば良いんだ。どこにだって、当たれば良いのだ。凪に当たったって、構うものか。所詮は他人なのだから、私が助かれば良い。そう。私さえ助かれば、凪なんてどうなったって。良い囮になってくれているじゃないか。今がチャンスだ。今しかない。私が生き残るには。
銃を、構えて、うとうと狙いを定める。そこで、1つの疑問。
撃って、良いのか?
だって撃ったら、興奮して、こっちに襲い掛かってくるかもしれない。この銃じゃあ、一撃で仕留められるはずも無いわけだし。だとしたら。
折角のチャンスが。折角、生き残れるのに。こんなところで死にたくない。私は、まだ生きるのだ。生きて、生きて。そして笑って死んでやる。愛する人と死んでやるんだ。
このまま凪に夢中になっているうちに、逃げるか。そうすれば、助かる確率はグーンと上がる。そして、凪の生存確率はグーンと、下がる。私を助けてくれた凪が、死ぬ。どっちにしたって、凪は危険だ。って違う。凪はどうでも良い。他人なのだから。そう。他人。凪はお節介で私を助けて。私が凪に気を配る必要は、義務はどこにだって無い。なら、良いんじゃ無いか。私だけ逃げれば。逃げてしまえば。
ごくりと唾を飲み込んだ。喉が乾く。汗が止まらない。怖い。何をしていても怖い。生きていても怖い。私は、間違っているかどうかで、不安だ。不安でたまらなくて。でも、凪は迷わなくて。自分が犠牲になってまで、私を助けた。私なんかを。本当に、バカアホ。私なんか助けなくても良かったのに。凪のバーカ。だから私なんかに見捨てられるんだよ。だって今だって私は、凪を助けるかどうかで迷っているのだから。

「————!!」

と、私は。バカなことを。ずっと考えていて。凪の、赤い、血が。舞うのを、見て。やっと、目が、冷めた。赤い。赤い。私の好きな、赤。赤。私の、好きな。私の。赤。赤。赤。血。血。血。血。血。血だ、赤だ。黄色い、触手。赤。凪の、息の、止まる、瞬間。赤。違う。まだ。赤。まだ。赤。死んで、無い。死んでない。黄色い触手に、貫かれたって。赤。死なない。赤。だって。嫌だ。信じない。赤。ウソ。赤。重い、体の落ちる音。赤が飛び散る。私、靴に、赤が。赤が。視界が。赤が。嫌。嫌。赤が。凪が。
凪、が。

—————————凪が。

「いやあああああああああああああああああああああ!!」


〜つづく〜


二十話目です。
早いな、最近書くのが楽しいです。