複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世(略)【100話超えてた】 ( No.139 )
- 日時: 2012/07/12 21:42
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)
21・存在証明の確立。
しばらくした、ある日のことだった。クオは、突然部屋にやって来て、俺を押しのけて赤髪に近付いた。俺よりも小さい手が、赤髪に伸びる。赤髪は相変わらず警戒して、身を小さくした。
なんか、野生っぽい。人間っぽくないというか。まぁ、仕方ないか。だってずっと1人だったのだろうし。食べるものも、眠るところも無くて、満足する生活ができて居なかったのだろう。そうしたなら、なぜ生きているのか分からなくなって、こうなるのも無理はない。
クオは遠慮無く、身を強張らせる赤髪に近づいて、笑った。俺も念のため、少しだけ近付く。クオに何かあったら大変だ。もしも、クオに何かしてみろ。すぐにその細い体を引き裂いてやるからな、赤髪。
「大丈夫だよー。僕は味方だよー。何が怖いのー? 喋れないわけじゃないでしょー?」
大丈夫も味方、という言葉も、俺は発さなかった。でも、クオはあっさり言って見せた。そういうことなら仕方ない。クオが大丈夫で味方なら、俺も『大丈夫』だし『味方』だ。そうなるしかない。俺は注意を払いながら、クオと赤髪の動向を覗う。
赤髪は首を傾げた。
「みかた、」
一言、初めて喋った。赤髪の声は意外に低くて、そして不安定であった。まるで、初めて喉を震わせるかの様な。そんな赤髪に、やっぱりクオは笑いかける。
「そぉー。味方だよー。安心しなさーい。ここには君の敵は居ないよ」
赤髪は、その言葉を聞いて、俺とクオの顔を見比べる。
ここで赤髪が会ったのは、俺とクオだけだ。今日まで、害は与えなかった。馴れるまでは風呂に入れないと決めていたので、相変わらず体は汚くて、臭いも酷い。これでやっと、風呂に入れることができる。ほっとした。
「ところで、君は誰?」
赤髪の体から力が抜けたのが分かったのか、クオは赤髪の目の前にしゃがみ込む。
もう心配は無さそうだ。俺も緊張を解いた。それでもやはり、赤髪からは目を離さない。そうしないと、安心できない。
「わかんない、わかんない」
クオのごく当たり前の質問に、赤髪は頭を抱えた。赤い髪を掻き毟りながら、譫言の様に繰り返す。
気味が悪かった。こんな反応をするのはおかしい。クオの質問はおかしくない。クオは何時だって正しいのだから。
クオの手が、赤髪の頬に添えられて、そして顔を上げさせた。赤い目が、見開かれる。瞳孔が開いていた。ほら、気持ち悪い。
「嘘吐き」
クオは笑った。俺でも意味の分からないことを言って、笑った。
後で聞こう。
赤髪が、嘘吐きである理由を。
赤髪を連れて帰ってきた理由を。
〜つづく〜
二十一話目です。
書いているときのBGMは、色々です。