複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世(略)【100話超えてた】 ( No.143 )
- 日時: 2012/07/16 18:53
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)
25・リピートに飽きた時。
「死んでねぇよ」
2回目を口にした理由は、自分を納得させるためであった。赤女は驚いて、俺を見上げた。
死んでない。死ぬわけないって。こんなことで、俺が後悔してたまるかって。
俺は凪の体を抱き上げて、歩き出した。森を抜けよう。
そして。そして。アイツのもとへ行こう。そして、事実を捻じ曲げて貰わなくちゃいけない。コイツが、凪が死んだって言う悪夢を、食べて貰おう。全部無かったことにしよう。
赤女は一向に立ち上がりすらもしない。
なんでだよ。消そうぜ。全部、無かったことにすれば、いいじゃんか。そうやって、都合の良い世界を作って行こう。そうしないと、やっていけなくなるだろ。そうしないと、俺、泣きそうで。嫌なんだって。こんな世界は。凪の目は、もう開かない。そんなことは無い。あのクリーム色を、俺はまた見るよ。
赤女は、口の端を、ひくつかせた。目が揺れて、口からか細い音が漏れた。
「ライアー、さん?」
まるで、俺が間違っているみたいな、そんな声。
止めてくれよ。気が付かせないでくれって。俺も、不安なんだ。死んでない。そう自分に言い聞かせないと、駄目な位。俺はとても弱い。こんなことで不安定になるほど。
一度、紫色のギガントを踏みつけて、森を出る方向に足を進める。しばらくして、俺の隣に、赤女の姿が現れた。赤女は、困ったように笑っていた。
そんな顔しないでくれよ。
俺は、見たくなくて視線を赤女から凪に移す。
「そうですよね、そうですよね」
事実を壊しに行く。嘘吐きの俺が、この夢を、消しに行く。
その前に、赤女の感覚を、少し壊してしまった。
+ + + +
赤いうそつき。レッドライアー。それは、僕が付けた二つ名。今ではもう世界的に有名になった、僕が育てたハンター。この世界で勘違いされて居ることは多い。ライアーの二つ名はみんながそう呼び始めて、付けられたものではない。
僕が、付けた。彼には嘘吐きの称号が似合う。誰よりも、似合う。
何も知らないフリをして。1人だけ、事実から逃げた。いや、逃げてはいないか。逃げてはいないな。
だって彼は今でも、赤という色を嫌い、そして、黒髪黒目になることに異常に執着して居る。それは『あれ』を覚えている証拠だ。
そして、隠しているのかな。僕にまでも、『あれ』を知って居ることを、隠しているのかな。
最低。なんか気分悪いな。ライアーがボクに隠し事なんて。そんな。でも、いいか。反抗期くらいあった方が、面白いもんね。
それでも、いつまでもその嘘が通じると、思うなよ。
いつまでも、甘い世界に入れると、そう思うなよ。
その世界は、いつか壊れるよ。
〜つづく〜
二十五話目です。
あっというまにこんな数字に。
嘘吐きました、短くは無いかもです。