複雑・ファジー小説

Re: 赤が世(略)【100話超えてた】 ( No.145 )
日時: 2012/07/19 19:35
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)



27・全てを巻き込むゲームを。


電車に乗り込んでからも、油断はできなかった。赤女は凪の側に居る。
寒い場所を作ってもらった。これで、安心だ。
今から向かう場所は、とある町。その街にはクオの知り合いがいる。俺のことも、当然知っている人だ。その人とは以前、顔を合わせた事がある。
クオに連れられて、行った。その時にはよく分からなかったけれど、今なら分かる。あの人は、凄い人だ。今、この世界の中で一番凄い魔術師かもしれない。そう思う。そうでなくても、こういう場面に立たされた時、思わず縋ってしまいたくなるほどには、凄い。
そんな人と知り合いのクオだって、多分凄い人だ。でも、いまだに何が凄いのか、分からない。見た目は凡人だ。俺の事を知りたがるくせに、自分のことは語らない。性別だって分からない。
男、だろうか。男にしては、小柄で華奢だ。戦いには向いていない体つき。そういう戦闘は、ユコトがやって居るのだろうな。アイツは、強いし。何より、クオへの愛が、半端ない。もはや、狂気に近いほどの愛が、ユコトを渦巻いている。
あの2人がどういう関係は、謎だ。俺と赤女のように、利害関係なのかな。クオのことを側に置く理由は、いまだに見つからない。
ただ、俺がクオとユコトに御世話になったことには違いないから、これからもずっとあの2人には頭が上がらないだろうな。
それを想像すると、なんだか嫌な感じがしなかった。


 + + + +


「お久しぶり、クイーン・ノーベル」

何度、いつ見ても、美しい。そんな言葉は、消した。だって、そんな事を言ったら、怒られそうだったから。本当は、言ってみたかったけど。そこまでワタシはバカじゃないから。
階段の上の豪華な椅子に座る魔女は、不機嫌そうに、ワタシを見下ろしている。

「なんの用」

この世界の魔術の頂点に立つであろう彼女は、ワタシでは無く、ワタシの後ろにぴったりとついて、魔女の城を見渡して居る人物を見ながら、冷たく言った。
やっぱり、そうなるよなぁ。予想通りだ。ワタシには、興味は無いと。

「うーん、いや、ただ会いたかっただけ」

半分冗談で言っても、ワタシの方を向かない。彼女に見つめられているのに気付いたのか、ワタシの後ろの人物が、首を傾げた。
そいつを、私の前に立たせて、薄い肩に両手を乗せる。珍しい私の行動に、肩が軽く跳ねた。

「コイツは、ガーディアン。かーわいい—私の手駒だよ」

捨て駒になっちゃうかもね。
なーんて。


〜つづく〜


十七話目です。
最近迷走気味。