複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世(略)【100話超えてた】 ( No.146 )
- 日時: 2012/07/20 16:06
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)
28・弄り合い。
「……? 手駒っテ、なんですカー?」
首を傾けて、ワタシを見上げるガーディアン。彼の目は死んでいる。光を一切受け付けず、顔にただ存在する、影。それが、ガーディアンの目。ワタシはその目も、紫っぽい黒い髪も好きだ。少しこの髪質はパルに似ている。
あぁ、パル。やっと手に入れたんだ。ワタシはずっと君が欲しくて、たまらなかったんだよ。なのに、手に入れたのは、アスタリスク。アイツを、絶対にワタシは許さない。ワタシが一番、パルを上手く使える。
「ガーディアン……?」
魔女が、眉をしかめる。いや、どうか分からない。
彼女の全ては白い。白く、美しいのだ。つま先から、髪の先まで、すべて、白い。その色を見ていると、自分が居なくなってしまいそうだった。
彼女を見るたびに、疑問に思うことがある。
こんな、何もない色に全身を包んでいて、彼女は自分を見失わないのだろうか。ワタシは、彼女を只見ているだけで、彼女に見下ろされているだけで、消えてしまいそうだというのに。こんな色に飲み込まれないほど、彼女は強いというのか。
そんな彼女が、ワタシは少し、羨ましいかもしれない。
ワタシは、強いわけではない。ただ、恐れられているだけで。ワタシの側にいる人物たちの中で比較的ワタシを怖がらないのが、このガーディアンである。コイツは、恐怖心が無いのかと不思議に思う。いや、でも、違うな。コイツだってワタシが怖いはずだ。
「うーん、そうだな、ワタシのお気に入りってことだよ」
そんなウソを軽々しくこの口は、ワタシ自身もあまり好きではない。だけど、この言葉を言うだけで、ガーディアンは嬉しそうに笑う。ワタシのウソを、糧にして生きる。そんな生活を強いるワタシは、最低かもしれないね。
でも。
これは全部。
「そうなんですカ! 嬉しいナー」
この言葉は、ウソじゃないんだろうな。だって本当に嬉しそうだし。変なの。ワタシに褒められたくらいで。
なんだか照れくさくて、ガーディアンの肩から手を離す。ガーディアンはワタシが触れていた肩を触り、何やらにやにやしている。気持ち悪い。ま、別に良いけど。ガーディアンはワタシのお気に入りだし。
「で、なんでこんな奴急に連れて来たのですか」
ありゃりゃ、全く会いたくなったっていうの、信じられてないな。ここまで来ると、悲しくなってくる。
「ガーディアンはほぼ、関係なーい」
そう、今日は、自慢しに来たのだ。顔が、まじめな顔に戻らない。やばい、今日のワタシはご機嫌だ。
「ねぇ、クイーン・ノーベル。もし、ワタシが、パル・トリシタンを捕まえたって言ったら、どうする?」
その名前に、彼女の体から、怒りの雰囲気が出てきたのは、ワタシでも分かることだった。思わず、体に力が入る。反応していないのは、ガーディアンただ1人。ワタシの様子が変なのに気が付き、ガーディアンも、少しだけ力が入る。
パル・トリシタン。バカだよねぇ。自分が貴重な人材だと分かっていながら、あんな草原をか弱い女と2人で居るなんて。
アイツの母親は、クイーン・ノーベルが封印した。そう。アイツの母親は、赤き時代、レッドエイジを蘇らせようとした。それは、今この世界全体のタブーである。あの時代は、もう起こしてはならない。もうこれは常識であり、一般の考え方だ。このクイーン・ノーベルも然り。
だから、アイツの母親を封印した。危険分子だから。実際、アイツの母親はもう一歩手前まで、完成させていたと言う。
良いじゃんか。ワタシはちなみに、赤き時代を保護する法の考え方を持っている。
レッドエイジ。良いじゃんか。全てが始まった、時代。その時代が再び来れば、この世界は変わる。
だからもう一度、起こすのだ。赤き時代を。
「何を言っているのです。あの女の息子は、アスタリスクが」
「あっれー? 知らないのー? アスタリスク、壊れちゃったんだよ。だから、あの施設の奴はみんな、逃げちゃったーの」
普通逃げるわな。だってアスタリスクは変態だし。
あの施設の中で、どんな事をしていたのだろう。想像もしたくないね。きっと、いろんな人間を、あそこで壊していたのだろうな。嫌だねぇ。これだから変態は。
ワタシは、変態ではない。
「っ、まさか、貴方も、レッドエイジを送り返すとか、言う出すわけじゃ、無いですよね」
少々取り乱し、椅子から腰を浮かせるノーベル。
そんな彼女に、私は笑ってやった。
ねぇ、君なら。君ならさ。
この笑顔を、なんと取る?
絶望と、取っておくれよ。
〜つづく〜
二十八話目です。
今回は落ち着いてかけました。