複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世(略)【100話超えてた】 ( No.152 )
- 日時: 2012/07/26 15:51
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)
32・呑気な傍観者。
待ちの中を歩いているときは、人の目が気になった。私はライアーのように前を向いて歩くことはできなくて、ずっと俯いていた。
恥ずかしかった。棺を引きずっているのが。
違う。
私が、この中の人を殺したんです。私が悩まなければ、こんなことにはならなかったんです。そもそも、私が勝手な行動をしなければ、凪は死ななくて済んだんです。私のせいなんです。だから、人に見られて、恨まれて当然なんです。私、でも苦しいんです。人に見られたくないんです。どうしてなのかな。自分の罪は認識しているんだよ。だから、受け入れなきゃいけないんだよ。
でも、それを私は受け入れようとしない。私はもっと反省していなきゃいけないのに。それなのに、私は今も罪から逃げようとしている。
「ごめん、なさい」
知らず知らずのうちに、私の唇が動いていた。
何度も、繰り返す、謝罪の言葉。
ライアーは何も言わず、進んでいく。
私は今も足を止めないのは、ライアーが居るから。私を引っ張っていってくれているから。
ありがとう。ごめんなさい。
私、弱くてごめんなさい。決心がつかなくてごめんなさい。反省しても、改善できなくてごめんなさい。
強い人になりたい。優しい人になりたい。守れる人になりたい。頼れる人になりたい。
それは、1人だったら絶対に分からなかった感情。余計ではないよね。余計ではないと信じたい。これは成長だ。私の欠点が浮き彫りになっただけ。
それ、だけ。
涙がにじんできたころ、ライアーの足が止まった。
私も当然止まる。
顔を上げると、真っ白な城の前だった。
ハラダ・ファン・ゴの本社よりも、大きいかもしれない。ガラス張りのハラダ・ファン・ゴとは違う材料でできた壁。
きれいな城だ。真っ白。いったい、何のために白いのだろう。だれが住んでいるのだろうか。
「行くぞ、」
「はい」
まるで、戦争に行くみたいな緊張感だ。
ライアーが、大きな扉を押すと、あっさりと開いた。どうやら見た目以上に軽いようだ。
中に入ると、まず目に入ったのは、階段。長い階段は2階に続くのではなくて、一番上の大きな椅子を置くためにあるようだ。
そして、椅子の上には誰もいない。
椅子と同じ白の色をした女の人は、黒い影に追われて居た。
黒い影は、動き回る白い人を、追いかけるために壁や床に着地して行く。黒い影が着地するたびに、壁や床が避けた。裂けても、床や壁は白のまま。
圧倒的な白の中で、黒い影は浮いていた。
黒い影。違う。
黒いには黒いけれど、影ではない。足がある。腕がある。頭がある。
あれは。
「人……?」
私が一言漏らすと、床に座っていた人が振り向いて、そして、白い人が止まった。
黒い影が、止まった白い人に襲い掛かろうとした時、座っている人が右手を挙げた。
「ガーディアン止めろ!!」
「エ、ア、はイ!」
ガーディアンと呼ばれた人は、不思議な顔をしていた。男か、女か分からない。とにかく、全体的に黒くて、暗いピンクの目だけが目立っている。
いや、あれはピンクか?
ピンクにしては、暗すぎるな。
「ライアーじゃんかあ、久しぶり」
座っている人は、不気味に笑った。
〜つづく〜
三十二話目です。
あついですねえ、みなさん大丈夫ですか?
私はすでに死んでいます