複雑・ファジー小説

Re: 赤が世(略)【100話超えてた】 ( No.154 )
日時: 2012/08/01 12:25
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)



34・二度と消えない傷をつけて、忘れさせないで。


「なんだよ、ノーベル。別に良いじゃんか」

雷暝は、不満そうに唇をとがらせて、ガーディアンと呼んだ子の頭を撫でた。ガーディアンは、なんでかすごく嬉しそうに頬を染める。
ノーベル。
彼女はそんな名前なのか。それにしても呼び捨てとはな。
彼女が纏っている雰囲気は、明らかに他の人と違う。彼女はここに居るのかな。なんて、変なことを考えてしまうほどだ。
彼女は、椅子にゆったりと座って、頬杖をついた。
不快じゃない。あんなに偉そうな態度をとられても、全然不快じゃない。だって、彼女はそういった態度をとれるだけの、権力と何かがある。
なんだ、カリスマ性?
……私はバカか。

「お前が居ると話が進まん。ライアー、急ぎの用なのだろう?」

その通りだ。
あのまま雷暝に流されてたら、いつまでも本題に入ることができなそうだ。
ライアーは、私の前からそっとどいて、棺がノーベルに見えるようにした。ガーディアンは、不思議そうに棺を覗き込む。
何だか、嫌だった。私の罪の本体を、覗きこまれているようで。

「酷いよなあ。ワタシが邪魔者みたいだ」

「……ライアー、それは」

雷暝の呟きを無視して、ノーベルが口を開く。怒りを少し含んでいるようにも聞こえる。呆れかな。呆れるなら、私にしてほしい。ライアーは何も悪くない。私が、ライアーを責めたから。また、困らせたから。
そうすれば、ライアーと一緒だったなら、こんなことにはならなかった。

「凪という男だ。ビースト、ギガントにやられた」

ライアーの声は落ち着いていた。本当は辛いと思う。今にも私は泣きそうだ。
今でも、あの光景が瞼の裏にある。触手が、凪を貫く様子が。命の果てる瞬間が。思い出したくないのに。それなのに、私の心は、私を責めるようにその光景を流し続ける。
私を責めて下さい。私にこの罪を忘れさせないでください。私を許さないでください。

「クイーン・ノーベル。頼む。生き返らせて」

声が、少しだけ、ぶれた。揺れた。情けなくなった。縋る様だった。そんな声に、涙が溢れた。
出せるかな。どうかな。でも分かんないけど。でも、私だって。私は。私も。

「ごめん、なさい……」

涙で前が出ない。雷暝が笑ってる。なんでだろう。なぜか、分かる。私の涙を見て、笑っている。楽しそうに。
いいや。私の醜態を見て、笑うのだって、私が笑わせている。私が、人に笑顔を与えているのだから。それで良いじゃんか。笑われても良いや。

「泣かないデ、なんで泣くノ。コッチは分かんないヨ。コッチのせイ? コッチが悪イ?」

私の涙を、必死にぬぐう指。喋り方がまだ固い。ガーディアンだ。
まだ、共通語が上手くないガーディアンは、自分のことをコッチと呼ぶ。変なの。なんでだよ。そんな呼び方されたら、もっと男なのか女なのか分かんないいじゃんか。
拭っても拭っても、涙は溢れる。
そんな私を、ノーベルは見ていたのかな。
どっちでもいいや。

早く、凪を生き返らせて。


〜つづく〜


三十四話目です。
参照900あざますううううううううううううう。
感激です!!!!!!!!!!