複雑・ファジー小説

Re: 赤が世(略)【100話超えてた】 ( No.156 )
日時: 2012/08/18 21:44
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)



36・鍵の子。


目を閉じて、落ち着こうと思っていた。でも、ただ瞼の裏を見つめていても、何も始まらない。状況を把握しないと。
俺は今、確実に銀とアシュリーとムーヴィの迷惑になっているんだ。アイツ等は、俺を探している。多分。本当は、探さないで欲しい。危険だし。俺なんかのために、危険な目に合わないで欲しいから。でも、探していない、なんて。そんなのは、嫌だ。俺は、そんなの嫌だ。迷惑だ、わがままだ。でも、きっとアイツ等は俺のことを探して来ているよね。
危険な目に合わないで。でも、俺を心配して。俺は、居ても居なくても同じ、そんな存在でありたくない。俺にとっても銀やアシュリー、ムーヴィのような存在でありたい。つまり、居なくちゃいけない存在。
空気、酸素、水、空、大地。そんな感じ。
俺は目を開けた。
マリンブルー。マリンブルー。え、なにこの色。暗いはずなのに。俺の目の前に広がる、マリンブルー。

「っ!?」

「あ、起きた?」

マリンブルーが、首を傾げる。顔を遠ざける。そのマリンブルーは、男の目だった。2つのマリンブルーは俺と同じ目線になっている。しゃがんでいるようだ。俺は床に転がっているのだから。だって、両手足が上手く動かないし。
マリンブルーは紺色の長めの髪を掻き上げて手首のゴムで軽く結う。
段々暗がりに慣れてきた。ある程度は見える。

「お腹、空いてるでしょ?」

マリンブルーは細い目をもっと細めて微笑む。なんだろう、ぞくっときた。俺はだんまりだったけど、それを肯定と受け取ったマリンブルーは、立ち上がって部屋の隅に向かう。
首はマリンブルーを最後まで追えなかった。目の届かない場所にマリンブルーが居るなんて、ちょっと不安だ。
大体、アイツの仲間だろう。俺を解放するつもりもないし、俺を痛みつけるつもりもないようだ。覗いづらい。なんだ、コイツ。絶対まともな思考回路はしていないだろうから、まともに従っていては絶対に駄目だ。裏がある。

「はぁい、パルちゃん」

うわああああああああああああ、今のはまじで確実に背筋が凍った。なんだよちゃんって。ふざけんな。気持ち悪い。思わず声をあげそうになったけど、唇を噛み締める。
マリンブルーが部屋の隅からずるずると引きずってきたのは、人間の死体だった。息を呑む。見慣れているはずだ。アスタリスクに原形を留めていない状態までボロボロにされた人間なんて、見慣れているはずなのに。
血がすでに固まって赤黒い死体を平然とマリンブルーは運んでくる。俺は目を逸らそうとしたけど、失敗した。
やっぱり、俺、腹減ってる。

「今、指上げるよ」

マリンブルーは死体の左手を掴んで、人差し指を、引きちぎった。


〜つづく〜


三十六話目です。
今回出てきたマリンブルーさんには色々頑張ってもらう予定です。