複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.16 )
日時: 2012/05/09 21:05
名前: 揶揄菟唖 (ID: LQdao1mG)
参照: http://www.kaki-kaki.com/bbs_test/view.html?517203

10・赤、黒についていく。


「俺は、人が嫌いだね」

それまで童話を語っていた口が発したのはそんな言葉だった。

今までの童話は全てつまらなかったから他の話をしろと私が駄々をこねたからだ。

「なんで?」

どうこういってもしかたない。

暇なのは変わりないからその話を広げようと試みる。

するとこの男、ジャルドは綺麗にそられている顎の髭を撫でた。

「なんてったって人のことを考えられない。全て自分が大切。そんなところが嫌いだ。それにそんな自分の醜さをほかの動物や人を蔑むことで周りを掘り下げ、あたかも自分が正しいような世界を必死で作っているんだ。醜いったらありゃあしないよね、全くだ。そんなことに気付かない輩だっている。全く救われない」

べらべらと一気に喋ったあとジャルド自分の赤と黄色と白のストライプのネクタイを緩めた。

次に白のズボンにきっちり収まっていた黒のワイシャツをだらしなく出し始める。

みっともない。
けど、止めない。

「……嘘でしょ?」

私は窓の外を見ながら呟く。

今日は晴れだ。
だからといってなんと言うことはないが。

長い廊下に、均等の距離で配置されている大きな窓は、クリーム色の廊下のタイルを照らす太陽の光を取りこんでいる。

私のその言葉に隣のジャルドはクスリと笑った。

「そうだね。俺は人が好きだ。嘘だ。でもその嘘は嘘でありその言葉は本当であり嘘でもあるがその言葉自体が嘘なので結局嘘ということにはならないが嘘だということは認めざる終えない嘘なんだよ」

楽しそうに、そう笑うジャルドはあぐらの体勢がきつくなったのか、立ち上がる。

ジャルドが座っていると私は見下ろすことができるが立ち上がるともうできなくなる。

別に嫌いじゃないけど。

「……嘘でしょ?」

また同じ言葉を吐くとジャルドは抑えきれなくなったのかくすくすと声に出して笑い始める。

「……証拠は?」

私はジャルドを一瞥してからまた窓へ視線を戻す。

鳥が1羽飛び立ったのを見届けてから私は少しだけ得意そうにいってやった。

「ジャルドがはっきり『嘘』っていわないこと」

「……カンコのそういうとこ、素敵」

ジャルドも。

…………なーんてね。

 + + + +

あいつの後ろにドワーフがもう1体いるのに気付いて急いで走った。

この銃の射程内まで。

俺の手はだらしなく震えていて、弾丸を詰めるときに何個か落としてしまっていた。

畜生。

もう少しだけでも弾丸を多く入れておくんだった。
ちゃんと怒鳴ってまでついてこさせるんだった。

あせって俺がボロボロと弾丸を落としている最中に赤い女はドワーフの1撃を間一髪で交わしていた。

おぉ。
成長したのか、まぐれか。
そんなのはどうでもいい。
きっと次は避けられない。
だってアレだけであいつの足はがくがく震えてやがる。
だから、次が来る前に俺が———!

流石に、驚いた。

あの女はがくがく震える足で身体を支えながら俺がやった武器に手を伸ばしていた。

やるき、なのか?

無理だ。
無理に決まってる。

ドワーフの動きに合わせてあいつが剣を振り上げる。

なんでいつも、タイミングだけはいいんだ!
とういうか馬鹿力かアイツは。
火事場の馬鹿力か。

アイツが剣を振り下ろす。
俺が銃の引き金を引く。

————キィィィン————

高い金属音が響く。

何の音なのかはわからないがとりあえず走る。

走ってぼーっとしている赤い女を突き飛ばし、背中の短剣を引き抜く。

そして頭を弾が貫通しているがまだぴくぴくと動いているドワーフの頭部を念のためもう一度破壊した。

赤い液体が俺の足元に散乱し、ブーツを汚したが気にしない。

とりあえず振り返ると俺に突き飛ばされて尻餅をついたままの赤い女が俺を見上げていた。

「あの……ありがとうございました」

赤い女はぺこりと頭を下げると申し訳なさそうに片手を突き出し、目線を逸らす。

「えっと……本当はコレ、返そうと思っていたんですけど……」

その片手には途中で刀身がなくなっている武器だった物が握られていた。

「折れちゃいましたー……」

あぁ、さっきの音はコレが折れた音か。

「あ、の……」

赤い女は折れた武器を隣に大切そうに置くと正座して、

「すいませんでしたーーーー!!」

土下座した。

なんだこいつ。
土下座フェチか。
Mか。
ドМか。
そうかそうか。

別に俺は武器なんて気にしていない。
だから土下座なんてされる覚えはない。

が。

コレは使える。
別にこんなことがなくてもこうするつもりだったが。
このほうがそれっぽいだろう。

「そうか、なら俺と一緒に来い」


〜つづく〜


二桁です。
十話目です。
ありがとうございます。
のろのろしていてすみません。
まだまだ頑張ります。
視点が最初主人公ちゃんでもライアーさんでもないです。
ころころかわるのは健全です。
文下手ですみません。
あやまってばっかりですみません。
次回でやっと主人公ちゃんの名前が出る予定です。
あくまで、予定ですので。


next⇒赤、名乗る。(予定)